2013年2月
昨年末は年明けにある青山円形劇場でのファミリーミュージカル「シーク・シーク・シーキングストーリーⅡ」の劇場稽古が行われた。年末に数回、こどもの城内のリハーサルでオーディションで選ばれた小学生から高校生まで12名たちにバレエシーンの振付をした。昨年に続き2回目の振付担当であったが、台本が大宰久夫先生、演出・主演が吉村温子先生と玉川大学で同じ教員同士で力を合わせてつくらせてもらっている。またバレエミストレスをされているのは江口富美子さんで、かつて私の作品に出演してくれた旧知の間柄で、この舞台では彼女の力によって支えていただいている。おかげでバレエシーンは幕開けのテーマ音楽・風の精の踊り・眠りの踊りと3つに分かれ、小学生か高校生まで笑顔を絶やさずきちんと踊りを全うしてくれた。正月明けて本番を迎えたが、この公演は人気が高く完売日も多く、日本人のみならず外国人のお客さまも多く見られ評価の高い舞台であった。
中旬には群馬県前橋市で毎年おこなわれている「ぐんまバレエアテリエ」というプレコンクールのアドバイザーとして今年も審査させていただいた。たったひとつの県のなかだけから参加する若いダンサーたちながら、レベルの高さには毎年驚かされる。今年はジュニアで若い男の子が大きな拍手を受け、私も講評でも彼を名指して誉めた。昔の話だかこどもの頃、技術も表現も未熟であった私にいつも大人の先生方は無条件に愛溢れる言葉をたくさんいただいた。その当時はいつも「学校の先生など社会の大人はみんな冷たいのにバレエの世界ではなぜこんなに大人は温かい方ばかりなのだろう」と思ったものである。それはその方たちは芸術家だからだと気づいたのはずいぶん後になってからだが、若い子たちに接するたびに当時のことが甦り、あの時の大人の方々たちへの恩返しのつもりでこどもたちに温かく接していこうと思うのである。
大学でも年度末の授業・レッスン・リハーサルが再開された。大学の1年は早く今月をもって授業カリキュラムとしては1年の終わりとなる。そんななか1月18日NHK大阪ホールで、また26日27日と東京・青山劇場で高円宮妃殿下が原作を書かれたものをもとにしたミュージカル「ビッグピープル・氷山ルリの大航海」が上演された。大阪芸術大学と東西の劇場が提携して企画されたもので私もバレエシーンの振付を担当させていただいた。作品は再演ではあったがバレエシーンは音楽もリメイクし振付を一新した。大学舞踊コースの選抜男女18名のバレエダンサーによって踊られ、計3回とも大きな拍手をいただいた。妃殿下とは高円宮殿下がバレエ通でおられたこともあり、今でも事あるごとに声をかけていただき、今回も優しく褒めていただいた。もちろん私に対してではなくダンサーの頑張りに目を細めておられたことをつけ加えておく。とくに青山劇場の公演はかつてこの劇場主催の青山劇場バレエフェスティバルで芸術監督を務めるなどバレエ人生のなかでもっとも思い入れのあるところで、その劇場で主任をつとめる舞踊コースの教え子たちを引き連れて踊らせたことは嬉しかった。ダンサーたちは本番が始まり、劇場の独特な広さを持つ下手袖でアッブしたり振りを踊ったりしながら出番を待つ姿を見るのがたまらなく心地よく、かつての自分とダブらせながらずっと目に焼きつけよるように見守り、出番になると客席へ向かったのだった。