2017年10月

 夏から秋になりバレエ公演がたけなわである。外来バレエ団もとくにロシアやフランスを中心に相変わらず多く来日し行われるが、やはりここは日本。自国のアーティストたちの頑張りぶりがうれしい。8月下旬に行われた吉田都さんと双子の兄の堀内元のふたりが中心になって上演した「Ballet for the Future」という公演では座長ふたりともスターにふさわしい踊りを見せた。ともにロイヤルバレエ団、ニューヨークシティバレエ団という最高峰で踊ってきただけあってオペラハウスが似合うダンサーであること感じさせた。今年はパートナーをそれぞれ替えて踊ったが、いずれも新国立劇場バレエ団のトップスターで華麗な踊りは言うまでもない。
 同じ世代の稀有のバレリーナ下村由理恵さんも「篠原聖一BALLET FOR LIFE 2017」という毎年恒例のバレエ公演で『ロミオとジュリエット』のジュリエット役が素晴らしかった。女性ダンサーにとってジュリエット役は最高度の技術と表現力を要求され、シェイクスピア台本では14歳だが舞台では同じ歳の子が演じることは演劇・舞踊ではありえず、一流ダンサーのみが挑む。彼女の踊りはまさに一流の証しでカーテンコールでもスタンディングオーベーションを受けていた。

 Kバレエカンパニー公演「クレオパトラ」はおそらく今年のバレエ界最高の話題作であろう。春の「ピーターラビットと仲間たち」、夏の「海賊」全幕、そして今回の秋の「クレオパトラ」と季節毎にこのバレエ団公演に足を運んでいるが、今回の演目は演出・振付・台本・音楽・美術すべてゼロからのスタートで、ミュージカル界ではよくあり、私もホリプロミュージカルなどでこのような新制作に出演させて頂いて経験があるが、国内バレエ界でこれだけ総経費数億円かかるプロジェクトを手がけるのは空前絶後と言っていいだろう。公演を拝見し、クレオパトラにまつわるバレエ・ダクシオン(バレエ用語で逸話の意)をひとつひとつ丁寧に演出しグランドバレエが持つダイナミックな舞踊シーンも展開される。
とくに印象に残るシーンはやはり主人公が大掛かりな舞台装置でピラミッドを思わせる大階段を登り詰めていくクライマックスだ。またディレクターの親友が「主題の音楽が素敵すぎる!」と渋谷のカフェで語っていたようにほんとに音楽が迫力に満ち旋律が美しい。間違いなくバレエ史に残る大作となるであろう。

 舞踊大学でも公演シーズンが始まる。大阪芸術大学舞踊コースでも毎年かならず10月下旬に舞踊コース卒業制作公演を行う。上演演目は学生主導で演出・振付・スタッフ・運営・制作まですべて請負う。公演経費まで自分たちが4年間積み立てた費用でまかなう。今年の4回生(大阪では学年を回生と呼ぶ)はわずか女子学生13名でのぞむ。彼女たちはこの4年間ずっとこの少人数で大学を過ごしてきて、いつも真摯な姿勢で授業であるレッスンやリハーサルに向かい、女子学生ばかりということはこれまでにほとんどなく、ひとりひとりが巫女のように神聖さすら感じ愛着がある。
ぜひとも彼女たちの頑張りぶりをハロウィンの夜大阪芸術大学芸術劇場まで観にお越しいただきたい。
 ・・・2017年10月31日(火)15:00開場 15:30開演 大阪芸術大学 芸術劇場
                                   (tel:0721-93-3781)

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