2018年4月
まだかまだかと思っていた桜の開花がやっと来たと思ったら、今年の桜は短命であっという間に散ってしまった。卒業式シーズンには遅く、入学式には早く、それに個人的な行動だがちょうど見頃の時期が3日間のバレエコンクール審査の真っ只中で丸1日劇場に缶詰めで眺めることすら出来なかった。でも今はネット全盛時代でSNSで各地の満開の様子をアップされたものを見ることが出来て気分は春爛漫を感じた。何だか便利というのか騙されているのかわからないが、そういえば舞踊も近頃は舞台を観に行かなくてもみんなYouTubeやネットでバンバンアップされ観た気分になるが、やはり舞台芸術をライフワークにしている者からして決して手放しでは喜べず、生の舞台を観て真のパフォーミングアーツを感じて欲しいものだ。
この時期は卒業シーズンでもあり入学準備の時でもある。4月から始まる学校や社会に向けて試験たけなわであった。新国立劇場バレエ研修所という国内唯一の日本芸術文化振興基金が管轄するバレエの専門学校的な研修機関があり、毎年6名ほど17歳から19歳までのバレエ生徒を受け入れているが競争率は書類審査からを含めると20倍近くの狭き門である。そこに入学すると国内最高峰のバレエ研修が2年間受けられる。学校長にあたる研修所長は長年新国立劇場バレエ団芸術監督を務めた牧 阿佐美先生である。実は私が小学4年生から中学生の時まで日本児童バレエという機関で週1回指導を受けた師でもある。バレエの初舞台がその時で何とあのNHKホールで、双子の兄弟で出演ということもありあまりの珍しさに当時新聞各紙に報道されたほどで、それがきっかけで後に各方面に自分が知られることになった。牧阿佐美先生にはその後ご自身の牧阿佐美バレエ団に子役などで抜擢下さり私のジュニア時代とてもお世話になった。高校生になってからも学校を休んではバレエ団員クラスを受けさせてもらったりローザンヌ国際バレエコンクールに出場した時は何と日本人審査員が牧先生で、ローザンヌ賞受賞の後押しをして下さった。その後も繋がりは続き、私がアメリカから帰国して青山劇場バレエフェスティバルに毎年連続出演している際にも芸術監督としておられ、新国立劇場バレエ団に入った時も先生が芸術監督でおられ人生通しての師でもあった。あれから時も経ち、今は新国立劇場バレエ研修所長としてご自身のバレエ団を率いながら教育者として活動されているが、何とそんな今でも声をかけていただき、研修事業委員という肩書きを下さり入学試験の試験監督をしたり、入学式や卒業式にも参列させていただいている。私がライフワークで続けている堀内充バレエコレクション公演にも超多忙のなかでもかけつけて下さり、正に私のバレエの母でもある。そんな折に「充ちゃん、私のバレエ団のダンサーにもあなたの作品を踊らせてもらえたらうれしいわ」と牧先生が新しく理事長を務めるジャパン・フェスティバル・バレエ団というカンパニーのダンサーを3名紹介していただいた。ここまでお世話になり、どう恩返ししたらいいものか人生通してあたふたしているのだが、これからも一流の芸術家としての牧阿佐美先生の姿をしっかりと目に焼き付けて一挙手一投足を漏らさず耳を傾け、これからも学び、そしてそれを後進に伝えていくことが恩返しのひとつと考え、この3名の素敵なバレエダンサーを喜んで受けいれた。
よし、今年も5月公演成功させるぞ。恩返しとしても…。