2019年5月
ようやく春らしく暖かくなってきた。日本は四季というものが持ち味なのに、温暖化などで気候の変化が激しすぎて残念である。昔5年間にわたり留学を終えて帰ってきた時は5月上旬で春を肌で感じ「やっぱり日本はいいな」とつくづく思い、春や秋があったからこそ芸術心が芽生えたのだなと実感したものだ。日本人の古き芸術心が失われて離れてしまわないか心配してしまうこの頃である。
まもなく堀内充バレエコレクション5月公演が開幕する。といってもわずか1日限りの公演なのだが、今年で7年目。スタートした時に中学1年生だった子が大学生になっていることになる。
この日のために2月下旬から3ヶ月、30回以上リハーサルを重ねた。5作品を上演するのでむしろ足りないぐらいかも知れないが、本拠として東京・西麻布にバレエスタジオを構えているおかげでリハーサルがスムーズに進行出来ている。出演者は男女50名を超え、1日に数作品稽古することもあり、入れ替わり立ち替わりダンサーたちが行き交い、活気に満ちていて嬉しい。この公演の本番に向けて出演者たちが自らが日々のリハーサルのなかで、その日のダメ出しや問題点を洗い出すようにチェックに余念がない。出演者たちはまるでカンパニーの団員、団友のようでクリエイティブな姿勢がうれしい。このスタジオから一歩外に出ればバレエダンサーたちは社会の中では社会人と言っても稀有な存在で、それぞれさまざまな壁にも当たってきているだろう。
昔、ニューヨークにいた時はやはり広い社会の中で孤独を感じたことが多かったが、バレエのなかに入るとみんながバレエを人生の礎とする者たちの集まりで、そんなコミニュティーの中にいられることが実に心地よく嬉しかった。当時ほとんどが白人で東洋人は私ひとりであったが、バレエというものがまるで教会のような世界でもあったのだ。こうして今も若いダンサーたちと共に時間を共有できること、そして公演ではそのコミニュティーが観客席までに広がって上演できる有り難さをしっかりと胸に刻み本番を迎えたい。
皆さまのお越しをお待ちしています。