2012年8月
7月は私にとって1年でもっともあわただしい季節である。
今年は夏にバレエ協会主催全国バレエの夕べに振付作品を出品することもあり、日曜日の昼間はバレエスタジオHORIUCHIの公演リハーサルをしてから夜と翌日月曜日はそのバレエ協会のリハーサル、火曜日は玉川大学でバレエ授業2コマ、水曜日から金曜日は大芸大舞踊コースの授業やリハーサルに追われ、大阪滞在中大学後の夜はY.Sバレエカンパニー公演の稽古があり、東京には土曜日の朝帰るといった具合。世の中忙しい人間はたくさんいるので大変だとは決して口には出さないが気を抜くことができないのは確か。
今月は舞踊コース2回生22名がキャンパス見学会上演会で大学芸術劇場で自作のチャイコフスキー組曲を踊った。チャイコフスキーは若き頃、老バレエマスターのマリウス・プティパのためにたくさんのバレエ音楽を手掛けた。プティパとは親子ほどの年齢が離れていたと聞く。だからこそ若きチャイコフスキーはプティパの意図を忠実に従ったのだろう。三大バレエをはじめ多くの作品にはプティパ原振付が数多く存在し、いつの時代になろうとこの振付は不変であるべきだか、90年代以降さまざまな改訂版、それどころか全編振付しなおす傾向になった。もはや伝統文化を守る姿勢はそこにはなく、新しい現代版としてつくり直している。そのことについてはまたあらためて論じることにして、私自身でかき集めたチャイコフスキー音楽を用いてシンフォニックバレエを振付たものを踊ってもらった。ダンサーたちは振付の意図を汲み真摯に踊りきり、当日たくさんの観客で埋まった客席から大きな拍手を受けていた。
下旬にバレエスタジオHORIUCHIのワークショップ公演が五反田ゆうぽうとであり、スタジオ生とともにバレエ「CARNIVAL」を上演した。これは1992年にユニークバレエシアター公演で父堀内完が振付したもので、原作ではディアギレフ・ロシアバレエ団がニジンスキー主演で初演している。20年ぶりアルルカン役で出演させてもらった。父が私につくってくれた役でもあり、この作品を本公演でふたたび取り上げることになった際、アルルカン役に決まってからはいつもより肉体訓練に余念がなく毎回のリハーサルはとても感慨深く、相手役のコロンビーヌを務めた城野有紀はバレエ団トップの高い表現と技術を持つダンサーでもあり、本番ではお互い実力を発揮し満足のいく出来で観客から多くの拍手をいただいた。
他に舞台では大阪芸大ミュージカル「日陰でも110度」が大阪城公園そばのシアターブラバで上演し、2幕冒頭のバレエシーン約10分の振付をし、教え子である舞踊コース3回生が舞台いっぱいに踊り、熱演し大きな拍手をいただいた。自分でもこのダンスナンバーはとても気に入っていて、自ら楽譜をもとにバレエ用に編曲して演奏していただいたほどで原作のブロードウェイ版と比較してもらいたいほどである。残念ながら観たことはないけれども。この公演の劇場入りしてからも稽古を怠ることせず、3日間毎日リハーサル室でバレエカンパニークラスをしてから本番に臨めたことも意義深かった。大阪芸大舞踊コースの存在はまだまた東京には知られていないところが多いけれど、大学のバレエコースでは国内最高の実力を持っている。ぜひ大学内外における公演を観に来ていただきたい。