2013年1月

12月上旬に玉川大学芸術学部パフォーミングアーツ学科による卒業プロジェクト舞踊公演が4日間行われ、12名による新作バレエ作品「SONATAS(ソナタ)」を発表した。ショパンやシューベルトの音楽を用い、純白なワンピースの衣裳から始まり、やがてバレエ踊るダンサーはシフォンのチュチュとモダンを踊るダンサーは帯状のスパッツ姿となり白鳥のように舞う叙情的作品を振付した。公演は大学内の劇場設備を整えた演劇スタジオで行われ、先月号で前述した急遽音楽を変更したことが功を奏し本番では多くの拍手をいただいた。母校であるこの大学で自作のバレエを上演するとは夢にも思っていなかったので、今年ですでに4年目4作品を手掛け、後輩ダンサーである彼女たちに踊ってくれたことは感無量でもあった。

芸大舞踊コース年内最後の学内公演は3回生による出演で日本舞踊から自作自演による作品エチュード、望月則彦教授作品に私の作品と計4作品という大ハードなプログラムをこなした。よかったことにどの作品とも全速力、MAXで彼女たちは挑んでくれたことだった。日本舞踊作品も指導した山村若先生も感心するほど熱心に取り組んでいた。夏にシアターブラバでバレエシーンを演じた彼ら彼女たちだがあの時は本当に好演し喝采を浴びたが今回もその成果を充分に発揮してくれた。

12月23日に宇都宮にある栃木県総合文化センターで今年もバレエ「くるみ割人形」を上演したが、今年で14年連続で演出振付を担当させてもらった。主宰の橋本陽子先生とは20年来の親交で、私がまだ当時20代なかばで新進振付家?として活動していた頃にいち早く振付を依頼していただいた恩がある。これだけ長い間振付させていただいている舞台は他はなく、橋本陽子先生は私と同い年の娘さんもおられることもあり、私にとってもバレエ界の母親的存在で大切な恩師である。今年は事情あって2幕だけの上演ではあったが、例年どおりの馴染み深い出演してくれたダンサーたちの活躍もあり、もはや伝統さえも感じさせてくれた舞台をつくりあげてくれた。

12月27日には東京文化会館大ホールで交響曲第九番バレエ「ルードヴィヒ」を上演、出演した。長年演じてきた同じ役で今回も踊れたことはうれしかったが、今回は本番数日前まで前述した舞台などが目目白押しだったためか、総稽古の間疲れからか身体を腰や膝と次々と故障してたいへんな目に遭った。「ひょっとした踊れないかも知れない」という思いが頭をよぎり、本番当日まで東京ミッドタウン内で構える私の主治医のところへ本番当日まで連日通い治療に努力した。ちょうど本番の数週間前に親友の熊川哲也君と長い時間夕食を共にしバレエ談義に花を咲かせ、とくにベートーベンの第九には彼も思い入れが深く話は尽きることなく深夜にまで及び、楽しい一夜を過ごさせてもらった。彼は超多忙な毎日のなか、当日約束どおり観に駆けつけてくれた。そんな友情もあり、何が何でも踊り抜かなければならない理由があったので本番無事踊り終えたときは久しぶりに心の底からほっとした。と同時に舞台芸術の価値をあらためて実感させられた瞬間でもあった。

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