2013年5月
3月中旬に5月31日に行う堀内充バレエプロジェクト公演に向けて出演者オーディションを行い、時間を置かずに下旬より振付稽古を開始した。5年ぶりに行う今回の演目は自らの作品だけでなく、双子の兄弟でアメリカ・セントルイスで芸術監督として活動続ける堀内元の作品と合わせ、公演タイトルを「堀内 元・堀内 充 Ballet Collection」とした。兄の作品はバレエ団で上演したものの再演だが自分は今回の公演のために新作を振り付けることにした。まず最初に始めることは音楽選考だか、若い頃「この音楽が好きで」とか「この曲でつくってみたかった」とかいうものはすでにない。作品の主題を考案しながらどれがふさわしいかひたすら模索する作業が続く。音楽家との共同作業も芸術家として楽しみのひとつだか今回はあえて古典音楽に挑みたかったので、バッハ、ヴィヴァルディを中心に選んだ結果、14名の女性ダンサーが踊る作品はバッハのヴァイオリン協奏曲を、自身が踊るデュエットをリストのビアノ曲を選んだ。これから2ヶ月後の本番に向けての振付作業が進む。
8月にY.S.バレエカンパニー公演「白鳥の湖全幕」の演出・改訂振付のリハーサルも開始した。こちらは自身の全幕ものの改訂振付は4本目である。白鳥の湖はチャイコフスキーがモスクワボリショイ劇場で劇場付きの振付家に依頼し初演したが、大失敗に終わりその後亡くなった後に老振付家のプティパがかつての自分の振付の専属作曲家だったチャイコフスキーを想い、音楽をベテルブルグに取り寄せて再振付をした経緯があり、それによって大成功を収め白鳥の湖は脚光を浴びた。私が初めて観たのは小学生の時、当時日本橋三越にあった映画館で観たルドルフ・ヌレエフとマーゴット・フォンティーン共演のもので、最後に王子がロットバルトに湖に沈められるシーンはあまりにも衝撃的でこどもながらにして凍りついてしまった記憶がある。その後ノーマルなキーロフ版やボリショイ版を観てほっとしたが今回自分が振付するにあたり、結末には自らつくる新演出にしようと考えている。今からそのシーンをつくるのを楽しみにしている。
大阪芸大舞踊コースでも、7月のキャンパス見学会におけるバレエ上演会や舞台芸術学科全コース合同による毎年恒例のミュージカル公演があり、それぞれバレエ作品、バレエシーンの振付も開始した。大学は教育上かならずレッスンを2時間近く行ってからリハーサルに入るので、こちらもなかなかハードではあるが、自分がニューヨークでバレエ学校留学時代でもそのスケジュールであったし、学ぶ者にとってとても有意義な時間だったので、大学で教える立場になってもこのスタイルは貫いている。今や大阪の大学とはいえ、半数近くは北海道から東京、愛知、九州鹿児島まで学生が集まり、まさに“バレエ留学”に来ている若者たちで溢れている。また私と同じようにバレエ一家の中で育った2世もたくさんおり、彼ら彼女たちにはグローバルな教育を展開している。日頃の教室となるバレエスタジオの校舎には芸術劇場があり、そこでも日頃からリハーサルを積み、まさにパリやモスクワのバレエ学校と同じ環境で教育が実践されているのである。
お手柄話をひとつ。今から7年前に新校舎が建てられたがこの校舎のバレエスタジオがある5階の教室は天井の高さから、床の柔らかさ、バーの高さからカーテンの色まですべて私が設計に参画し意見を出して造られたものである。が……、ただの自慢話に受け取られてしまいそうなのでこの辺にしておく。