2013年7月

6月はバレエ公演・舞台の本番をこなしながら振付リハーサルにも明け暮れた。大学で上演するふたつのバレエ作品と大阪を本拠に置く若いバレエ団Y.S.バレエカンパニーによる「白鳥の湖」である。大阪芸術大学舞踊コースはバレエ、ダンスを専門分野として学ぶ者たちの集まりだか、まだまだ世の中?の人たちは私が主任を務める本コース学生の存在をわかっていない。彼ら彼女たちの姿勢・視線は真剣であり、最近の若者たちの甘い姿はそこにはない。私の方こそ緩んだ気持ちでバレエ作品の構築をするとすぐ悟られてしまうのでこちらも毎回手を抜くことなく取り組んでいるのだ。はい。
白鳥の湖は1幕と4幕の振付に熱が入っている。長く東京シティバレエ団や新国立劇場バレエ団で道化役を踊り、評価を受けた自信の役でもあり、第1幕で大暴れ?したのでその景には力が入る。また第4幕は堀内版の最大の魅せ場として位置づけているのでこちらも振付を受けてくれるダンサー、そしてバレエミストレスの方々との熱い作業が続く。王子役をつとめるのは今年も山本庸督君で彼も舞踊コースで薫陶を受けた卒業生である。長くアメリカのバレエ団で活躍し今年から本格的に国内に本拠を移している。

5月のプロデュース公演や振付出品した舞台が続いたためなかなかバレエを観賞する時間がなかったが、Kバレエカンパニーの「シンデレラ」、「ベートーヴェン第九」公演と「ジゼル」全幕を立て続けに観賞した。ひとつのカンパニーが春のシーズンだけでこれだけの公演を重ねることができるの途轍もないことで、また内容もどれも素晴らしいものであった。「第九」は熊川哲也芸術監督がとても思い入れ深く取り組んでいたもので、こちらも胸を響かせながら吟味させてもらった。クラシックレパートリーとは違い、演出・振付から美術に至るまで100%オリジナル作品でもあり、膨大な労力と時間を費やしていたのが作品から読み取れる。生の管弦楽とコーラスを率い、毎回上演されるたびにバージョンアップされるのは芸術家の姿勢として当然で終演後に最大の賛美を彼におくらせてもらった。いつも謙虚でまたストレートに受け応えしてくれる彼の態度がたまらない。ジゼルのアルブレヒトとロイス役も今まで彼が長年演じてきたなかでも今回こそ最高の踊りと演技を魅せた。これは親友としてでなく舞踊界の人間としてひとりの舞踊家を称えているのである。公演後まもなくして紫綬褒章の受章の知らせがあったがまさにタイムリーであった。今後も彼の動向に目が離せない。

5月のバレエプロジェクト公演も終わり、さまざまな舞踊関係の雑誌やネットサイトに公演評を載せていただきその数は5社以上に上った。日本国内の舞踊評論家は海外に比べとても多く、私も大手バレエ団と同じく20名を超えるその方々をお呼びした。公演講評でいちばん嬉しいのは、公演を楽しみにチケットを購入して来ていただいた観客の方々の温かいお気持ちで、それが何よりも心の支えになっていることは言うまでもない。
いつも舞踊を創造する立場とジャーナリズムを唱える立場とが相対するのたが、今回公演をプロデュースする立場として言わせてもらうと、彼らに対しては今後ひとりでも多くの観客が公演に足を運んでもらえるような評論をしてもらうことを望んでいる。評論のなかには心ない中傷的表現だけをされる方がいつもいる。残念ながら今回もいたのである(FU)。信じられない事実を暴露するが、評論する立場の方は、時として公演外で個人的に攻撃することには驚かされる。公演を主催した側はすでに口する立場にないことをいいことに、メディアに一方的にまくしたてるやり方は改めるべきことだと思う。大学教員が大学生に必要を超える過度な指導指摘をしてはならないことと同様と言えばおわかりだろう。今回の公演のカーテンコールも、舞台に立つ側から感じた限り、実に大きく暖かく好意的なものであったことはあらためて報告したい。だから決して今回の出来事を感情的に捉えているのではないことを付け加えておく。
今後純粋なバレエ愛好者の方々には、さまざまなバレエ公演でもしも心ない評論を目の当たりにしてもどうか左右されず、自分の目線で舞台を見つめ続けてほしいと願っている。なかなか舞踊家の立場としてこの項については言えないことだが、公演に向かって上演するまでどれだけの時間、多くの方の協力、経費労力がかかっているのかわからないだろうし、このコラムは「…放談」である。今後も舞踊界のためにも世界初の舞踊評論の評論評価?もする意気込みである。

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