2013年12月

まさか自分が大学の教壇に立つなど思いもよらなかった。十代の頃、夢中になってローザンヌやモスクワのコンクールに挑んでいた頃から思うと隔世の感がある。三十代のはじめに日本音楽高校でバレエの特別授業を初めて受け持って以来、今は准教授を務める大阪芸術大学舞踊コースをはじめ内外の舞踊系大学・高校で教育にたずさわっている。
現役ダンサーでいる自負から実習・演習であるバレエのレッスンや振付作品の授業はもちろん私の得意科目であるが、文字通り教壇に立って教える「舞踊論」の授業は四十代になった今では力が入り、舞踊を専攻する学生も多く耳を傾けてくれている。実は私はバレエはロマン主義者で古典主義とは異なった持論を授業で展開している。哲学的ではあるが舞踊史をとおしてバレエを解剖し、現代・現在のバレエの在り方を把握させ、未来のバレエの方向性を学生自身に探らせている。
残念ながら日本人の8割はいわゆるクラシックバレエをバレエと思い込んでおり、実際私も若い頃は何となくそう思い込んでいたし、今もコンクールで入賞する若者たちですらほとんどそう感じているだろうが、これには警笛を鳴らしている。最近こそロシアのバレエ界は気づき方向転換したが、今や国際的にバレエの流れは古典主義から脱却している。しかし、せっかくダンサーの国際化が進む国内のバレエ界はいまだにそれを受け止めていない気がするのである。私の若い頃はまだ国立バレエ団もなく、未来のバレエについて同士の仲間とよく朝まで語り合ったりしたものだ。今の世代のダンサーも恵まれた環境に甘んじることなく、つねに「これでいいのだろうか」という疑問を持ちながら歩んでほしいと願って授業を続けている。

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