2014年1月
今年も秋から冬にかけて多くのバレエ・ダンス公演が盛んに各地で上演されている。ローザンヌコンクールで奨学金を得て付属のバレエ学校を卒業したニューヨーク・シティ・バレエ団も来日し、バレエ界は大いに賑わっている。そんな中ふたつの大学公演で私も初演再演ものを含め3つの振付作品をつくり、ダンサーたちと共に汗を流した。
またクリスマスシーズンにもバレエ「くるみ割り人形」堀内版全幕を今年も栃木県宇都宮で上演を果たした。今年も王子役は牧阿佐美バレエ団のプリンシバルダンサー京當侑一籠君が務めてくれた。
日頃からダンサーにはしっかりと観る側に立ち、自己と他者の目で自身を見つめて踊るよう伝えている。「楽しんで踊りたい」などと最近はすぐ口にするようになったが、かつてはそんなこと言える空気は若い世代にはなかった。でもそれは悪いことではなかった気がする。もちろん今や人は楽しみたくてプロもアマチュアも舞台に立つ。しかしバレエは舞台芸術におけるものであり、テレビやイベントで繰り広げられる”だんす”とはかけ離れた芸事の世界にある。踊りが多様化した今こそ、バレエを教える側はしっかりと技術だけでなく、接するためのしきたりやマナーまで厳しく教えなければならない。私が教える大学でもバレエの敷居をつねに高くしており、ドレスコードもヘアスタイルのシニオンはもちろん指定し、レオタードとタイツのみでスパッツなどダンスメーカーが商業向けに宣伝しているスタイルは一切許していない。大学や専門学校で学ぶダンサーたちはいずれ指導者になることを視野に入れているはずで、それを怠ると、楽しむ”だんす”と一色単にされてしまうだろう。バーレッスンの最中に水を飲んで受ける姿勢もフィットネスクラブやカルチャーセンターが健康法を謳っているに過ぎず見苦しく映る。私が若い頃に受けてきたパリオペラ座バレエ学校、ボリショイバレエ団、キーロフバレエ団、スクール・オブ・アメリカン・バレエでもバーでゴクゴク飲んでいる優秀なダンサーはいなかった。「今は時代が違うわよ」と言いたい者は言えばいい。こちらは一流になるための手段ではないよと言っておくし、ビジネスに利用されている自分に気づかずお・ど・ら・さ・れ・続ければとつけ加えておく。