2015年2月
新年というのにつらい気持ちで取り組むふたつの舞台があった。それは青山劇場・青山円形劇場のふたつの劇場が閉館されることになり、どちらもその最終公演に関わらせていただいたことだった。
ひとつは毎年年末と年始にかけて行うこどもの城・青山円形劇場主催のファミリーオペレッタ最終公演「夢の国のちびっこバク」で、高円宮妃殿下原作のオペラ化したものでバレエシーンを振付担当させていただいた。年末年始は高校生から小学生まで選考されたジュニアダンサーにバレエを振付することが恒例となっていて毎年楽しみにしていた舞台でもあった。
この劇場は今から27年前に劇場開場記念バレエ公演の際に振付作品を出品・出演させていただいて以来、さまざまなバレエ・ダンス公演にダンサーとしていちばん最盛期の頃に出演させていただいた思い出深き場所であった。近年では玉川大学芸術学部パフォーミングアーツ公演でも後輩バレエダンサーたちに毎年必ずバレエを振付し上演させていただいていた。
演出・脚本・主演をすべて引き受けていたオペラ歌手の吉村温子さんは私の恩師のひとりである同劇場プロデューサーの故高谷静治さんのご夫人で長くこの公演をライフワークのように取り組んでおられていただけにご本人の無念さを思うといたたまれない気持ちでもあった。本番初日は演出を担当された私の尊敬する舞踊家の名倉加代子先生と高円宮妃殿下と3人並ばせていただいて観賞し、公演を見守らせていただいた。
もうひとつは同じくこどもの城・青山劇場主催の青山バレエフェスティバル最終公演が1月下旬にあり、そちらも振付・出演させていただいた。すでにこのフェスティバルは10年ほど前に閉幕したがこの閉館を前に、日本のバレエシーンを牽引した姿を最後にもう一度観客にアピールしようと行われたもので、こちらも長きに渡り関わらせていただき、とくに芸術監督を務めさせていただいただけに名残惜しい限りであった。双子の兄堀内元やこの公演をきっかけに親友となった熊川哲也君、バレエキャリアのなかで長いあいだ良きパートナーとしてペアで踊ってくれた渡部美咲さんや多くの恩師、先輩、後輩との思い出は尽きない。
またフェスティバルだけでなく、名倉加代子ジャズダンス公演やホリプロバレエ公演、ミュージカルなど数多くの公演に出演させていただき、最近でも大阪芸術大学東京公演でもバレエシーンを教え子たちに振付をしてきただけに、この最後の舞台に立てたことは有意義であった。
ただ、今回の公演はかつての出演者が一同に会したわけではなく、ベテランから若手まで今の国内のバレエ界の第一線で活躍するアーティストが集結しただけあり、こちらもしっかりと踊ることに必死でそんな感傷に浸る余裕など全くなかった。そんななか最後の全員によるカーテンコールではやっと気持ちが高揚して、皆が一斉にレベランスときに笑顔いっぱいにバンザイジャンプをしてしまい、観客がどっと沸いた。終演後に多くの関係者からそれを話題にされてしまったが自分の中ではあまり特別なことをしたわけではなく、若い頃この劇場でたくさんはしゃがせてもらってきたので、たまたまその時の側面がいつも通り出ただけであったのだ。劇場も喜んでくれたかなぁ。