2017年1月

 南米のコロンビアのメデジン市で立て続けに悲劇が起こった。日本人留学生が強盗殺人に遭い、またプロサッカーチームのストライカーたちを乗せた航空機が墜落してしまうというあまりに痛ましい事件・事故が相次いだ。あまり日本人には馴染みのない都市だが私は25年程前になるがそこのバレエカンパニーに招かれ踊った思い出がある。今やテロ事件が頻発したり社会情勢の悪化のなか、今ではとても日本人が行ける場所ではないが当時は南国情緒に溢れ暖かい気候でヒスパニック民族が住む魅力的な土地であった。人々も温かくまた美しい街並みで素敵な思い出がある。劇場もオーケストラが優秀で生演奏で上演したが本番は素晴らしい音楽で踊らせていただき、いわゆる南米気質でカーテンコールも熱狂的であった。夜もテラスのあるレストランで夜空が澄んでいるなか、山あいの夜景があまりにも美しく、暖かな風あたりのよいテーブルで乾杯をした。どうか、またふたたび活気を取り戻してほしいと願っている。

 12月から年明けにかけ、クラシックバレエ(和製英語・英語ではクラシカルバレエ)の巨匠であったマリウス・プティパとワイノーネンの改訂振付を3公演相次いで手掛けた。日頃から自身による振付作品を発表しているので、私が改訂振付していることを存じないひともいるようで「堀内さん、全幕の振付もやってください」とよく言われるが、「ジゼル」「白鳥の湖」「くるみ割り人形」「ロミオとジュリエット」「真夏の夜の夢」などすでに手掛けている。オペラやミュージカルのバレエシーンもかなり振付しており、もっと発信していかなくてはならないのかなとも思うが今日はこれには触れずにおく。

 12月中旬に大阪芸術大学舞踊コース2回生による公演を2日間にわたり上演した。主な演目は「ラ・バヤデールより幻影の場」とモダンダンス「SAKURA」であった。この時のバヤデールを改訂振付したが、今年も大学舞台美術コースの学生によるデザインおよび制作で装置を彩り、若干二十歳の学生による美術は実にみずみずしく美しい。美術だけでなく照明デザインも照明コース生によるもので、ダンサーのみならずみな若者たちでつくられ、まさに世界でひとつだけのバヤデールであった。毎年このシリーズは行っており、今回でもう6作目で今や私の楽しみのひとつとなっている。今年は大学2回生ダンサーたちのクォリティも高く、2日間公演ダブルキャストで主役ニキヤとソロルはじめバリエーションもそれぞれ持ち前の力を発揮しハイレベルな出来となった。

 12月25日クリスマスに今年もくるみ割り人形全幕を上演した。「栃木・宇都宮にも毎年クリスマスシーズンにバレエくるみ割り人形を定着させたい」という舞踊家橋本陽子先生の願いから委嘱され今年で19年目を迎えた。先生ご自身のエコールドゥ・バレエがこれまで東京と宇都宮の2ヵ所であったが、東京に統合されることになり本年を持ってクリスマス公演が最後となった。19回と言っても毎回同じではなく、さまざまな振付シーンの改訂を行ってきたこともあり、今回は集大成ということになった。特に雪片のワルツから2幕ディベルティスマンが私の振付力の持ち味を発揮できる場面で毎年かなりの盛り上がりを見せる。宇都宮スタジオ生、私の教え子たちを含めたバレエダンサーたちの力がゲスト男性ダンサーとともに高いテクニックと表現力が際立っていた。

 年明けの1月8日には日本バレエ協会関東支部神奈川ブロックの主催公演で、「ライモンダ第3幕より祝典の場 グラン・パ・クラシック」を委嘱された。公演は神奈川県民ホールという横浜で唯一のオペラハウスで上演する。ライモンダ第3幕は主人公ライモンダと騎士ジャンヌ・ド・ブリエンの結婚式の中でさまざまな踊りが披露される場面で、この作品中のグラン・パ・クラシックとしてふたりの男女のプリンシパルと4組のソリストによって繰り広げられるオリジナル作品にコールドバレエを融合させ、随所にハンガリアン的な要素を盛り込ませ振付した。
20世紀の代表的振付家ジョージ・バランシンが若き頃ロシア帝室バレエ学校時代に踊った同作をオマージュした「Cortege  Hongrois」(ハンガリアン行進曲)というバレエ作品を1973年に発表したが、その後1985年にニューヨークシティバレエ団によって復刻上演され、翌年、当時私が付属のバレエ学校在籍中にこの作品に学校公演で主演する機会に恵まれた。自分にとってバレエ「ライモンダ」はむしろこちらの印象が強く、今回の公演ではこのときのメモワールをもとにシンフォニックバレエとして再構築・改訂振付を行ったのである。バヤデールと同様自分がかつて踊ってきた思い入れのある作品でもある。ロサンゼルスバレエ団の清水健太君、NBAバレエ団の山本晴美さんをはじめプロフェッショナルダンサーたちも顔を揃え、振付を終えたあと日々の仕上げのリハーサルでも熱い視線でダンサーたちを見守っている。

 今年も1年が終わろうとしている。この1年間も自身の振付作品をさまざまなところで上演させていただいた。ざっとラインナップを並べると

①「ラプソディインブルー」音楽・ガーシュイン
②「フォーシーズンズ」音楽・グラズノフ
③「ロミオとジュリエット」音楽・プロコフィエフ
(2月 大阪芸術大学卒業舞踊公演・大阪芸術大学芸術劇場)

④「ロマンシングフィールド」音楽ドヴォルザーク
⑤「バレエの情景」音楽ストラヴィンスキー
⑥「レ・シュマン」音楽プーランク
⑦「パリのよろこび」音楽オッフェンバック
(5月 堀内充バレエコレクション・東京目黒パーシモンホール)

⑧「グラズノフスィート」音楽グラズノフ
⑨「真夏の夜の夢よりスケルツォ・妖精たちの踊り」音楽メンテルスゾーン
(7月 大阪芸術大学キャンパス上演会・大阪芸術大学芸術劇場)

⑩「パリジェンヌのよろこび」音楽オッフェンバック
(8月 大阪YSバレエカンパニー公演・NHK大阪ホール)

⑪「リトルバレエ」音楽ルヴィンシュテイン他
⑫「真夏の夜の夢スケルツォ」音楽メンテルスゾーン
(9月 バレエスタジオHORIUCHI・東京目黒パーシモンホール)

⑬「カルナヴァル」音楽シューマン
⑭「レ・スィネ」音楽木村カエラ、シューベルトほか
⑮「ラ・バヤデール幻影の場」音楽ミンクス
(10月‐12月 大阪芸術大学学内舞踊公演)

⑯「Horizon\ホライゾン」音楽フェダーセル
(12月 玉川大学芸術学部演劇スタジオ)

⑰「くるみ割り人形全幕」音楽チャイコフスキー
(12月 宇都宮エコールドバレエ・栃木県宇都宮市教育文化会館)

⑱「ライモンダ第3幕祝典の場」音楽グラズノフ
(1月 日本バレエ協会関東支部神奈川ブロック公演・神奈川県民ホール)

・・・と18演目上演させてもらった。来年もさまざまな演目、そしてダンサーとの出会いを楽しみにしたい。

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