2017年8月
今年の夏は前半は暑い日々が続いたが後半は雨ばかりで例年の酷暑というほどでなく、また自分自身も夏らしく過ごしたわけでもなく、ただ自分のあたまの上を夏が通り過ぎるといった感覚であったような気がする。でも夏は汗をかくことが好きな自分にとってかつてダンサーとして学んだバレエ学校時代から好きな季節だ。
8月のあたまに大阪芸術大学舞踊コース生31名と玉川大学芸術学部舞踊生5名が東京・大井町きゅりあん大ホールに集い、計3作品いずれも小品ながら私の振付作品を踊り披露してくれたことが嬉しかった。昨年9月に初めて舞踊学生を私の姉が主宰するバレエスタジオで踊ってもらったのだが舞踊関係者から好評でもっと紹介する意味でも見せるべきと進言をいただき今年も実現した。
作品はバッハベル『カノン』、メンデルスゾーン『真夏の夜の夢より妖精たちとパックの踊り』、そしてビゼーの名曲カルメンよりジプシーの場面の音楽を起用して振付した『カルメンファンタジー』。いずれもダンサーたちは好演し客席から大きな拍手を受けた。
彼女たちはこの日の為にリハーサルを重ね、本番前日には新宿にある芸能花伝舎という日頃新国立劇場バレエ研修所が使用しているバレエスタジオでレッスン、リハーサルを行い、当日も全員朝9時に楽屋入りし、ロビーに集まりバーレッスンから舞台稽古まで気を緩めることなく本番を迎えてくれた。特に大阪から参加した大阪芸術大学舞踊コース生は東京で初めて踊ったダンサーもいたり、あまり東京まで足を運ばない者ばかりだったのに浮かれることなく、バシャバシャと記念写真ばかり撮る発表会特有の風景もなく、劇場のなかで1日バレエと向き合い真摯に静かに行動をしたこと、今の舞踊大学生の一側面として特筆したい。
私のニューヨークであったバレエ学校時代、学校公演がバレエ団入団テストのようなものでもあったため、思い出づくりに記念写真をなんて空気は全くなかった。その証拠にあの時の写真が1枚もない。今思うと1枚ぐらいあればな、と後悔しているので、私え子たちと撮った卒業公演などの写真は今は大切にしている。
毎年夏はこのコラムでも同じことを書くのだが、この夏もさまざまなところでコンクールやダンサーたちの力くらべのようなガラコンサートが各地で繰り広げられた。私もかつてコンクールやガラ公演にはよく出場させていただいたのだが、むかしはまだ国立や公立的バレエ団もなく国際的な活動する一流バレエ団も少なく、未来を担う若手バレエダンサーの育成、発掘が目的であった。こうしてバレエ大国となった今、昔よりも一層盛んになったこの競技会のような舞台の意義とは何かと問われたとき、どのように答えたらいいのだろう。今やビジネスや商業的なものになってしまっていると考えてしまうのは私だけだろうか。コンクールどうしがこっちのコンクールの方が賞の褒美がいいからこっちにするとか選んだりしないのだろうか。またどこかダンサー個人が対象であるはずが各バレエスタジオ対抗的になってしまわないだろうか。あるいはコンクール、コンクールで飽きてバレエ本来の魅力に触れずに辞めてしまう子たちが多くなってしまわないだろうか。・・・コンクールの審査員を務めながら心配ごとは尽きない。
われわれダンサー出身の審査員は純粋に未来のダンサーを見ることでワクワクしているのだからバレエ発展のために開かれ続けることを願うばかりである。