2019年12月
今年の秋も東西の大学舞踊の舞台公演で新作バレエをクリエーションし、若いダンサーたちが熱演を繰り広げてくれた。
玉川大学芸術学部舞踊公演では、今年もバレエ作品を振付させていただいたが、昨年の公演で発表した自然をフューチャーした題材「星空と海」に続き、今回も樹木とそよ風をモチーフに「Soyosoyo…ト」というタイトルで上演させていただいた。昨年の作品はピエール・モンドリアンの絵画に触発されたのだが、今回も上野にある国立西洋美術館へふらりと鑑賞しに出向いた際に常設展示されているジョセフ・ヴェルネの「夏の夕べ、イタリア風景」に出会い、その絵は幾つかの樹木が左右に風でなびいているのだが、当たり前だがその肝心の風が描かれていない。そんな光景に魅せられて、「なるほど…、」と思い立ち舞踊化を試みるきっかけともなった。音楽はドイツ人作曲家フェダーセルを今年も起用した。風を表現するダンサーはクラシック技法のポアントワーク、樹木をあらわすダンサーをモダンテクニックを素足でそれぞれ競い合わせるように振付をした。衣裳デザインは今回も衣裳担当の学生がこちらのイメージをしっかり汲み取りすべて手作りで縫い、素敵なコスチュームを作りあげてくれた。衣裳担当の主任の学生は実は私のバレエの授業の教え子の4年生で、彼女はバレエ堀内作品の出演者オーディションに毎年挑戦してくれたのだが結局1度も選ばれず涙を飲んだ。彼女の無念な気持ちを思うとこちらも立場もあり心苦しかったのだが、今回制作側にまわり見事に力を発揮してくれたことが何よりもうれしく、このことを特筆したい。こうして4日間にわたり玉川大学演劇スタジオで上演し、毎回たくさんの温かい拍手喝采をいただいた。
大阪芸術大学舞踊コース学内公演では「Fantasia」というタイトルで、文字通り幻想の世界を描いたバレエ作品を上演した。名作曲家ベルリオーズの同名作品である「幻想交響曲」をかつて父親が振付し、さまざまな斬新な場面がまだ小学生だった自分の記憶のなかに鮮烈に残っており、とくに第2楽章の「舞踏会」が実に甘味で素敵な旋律が頭から離れず、それらを若き女性たちが夢みるある姿と重ねあわせて構成をした。作品は現実の日常のありのままの姿をした彼女たちが舞台上でシューベルトのピアノ曲の調べに乗せてバレエを踊っているシーンから始まり、若い頃感性を刺激させてくれたフレデリック・マーキュリーのクイーンの音楽を挿入させたり、時に自身に対する戸惑いを表すソロなども交え、現実と幻想を交錯させながらラストに前述した「舞踏会」シーンを配置し約40分にわたる作品をつくりあげた。またここでも芸術大学生が活躍し、作品の舞台装置の美術デザインも大学舞台美術コースの女子学生がこの難題に挑んでくれ、終曲では鮮やかな城壁とキャッスルを想わせるオブジェを飾り舞踊作品に華を添えてくれた。