2022年6月

 また梅雨の季節となった。でも舞踊の世界はほとんど劇場や稽古場といったインドア派なのであまり影響はなく、むしろ涼しい方が踊る側にとっては都合がいい。
むかしニューヨークに住んでいた頃はもう5月下旬から夏と行った感じでエアコンもその頃から大活躍で、そのまたむかしモスクワに国際バレエコンクール出場のために6月をひと月近く過ごした時も暑く、夜がなくあの有名なホワイトナイツ・白夜でもあったから睡眠まで気候の違いに慣れなくてはならず苦労もあった。また米国東部のマイアミにも6月に滞在したことがあったが、そこは常夏の楽園で暑くてリハーサルでパドドゥを踊ったアメリカ人の子とそのままビーチに行って海に飛び込んだこともあった。でもそういった経験が大人になって生かされてどんな気候の変化、異常気象でも気持ちが対応できている気がする。つくづく若いうちは旅をし武者修行はすべきだと思っている。

 5月6月は日本でもバレエの春のシーズン真っ盛りといったところで、自分のバレエコレクション公演も必ずこの時期に行うが、各バレエ団も今年はコロナ禍に負けずに賑やかに活動を再開させた。ゴールデンウィークは毎年かならず「バレエコンクール・イン・横浜」の審査員を2日間にわたり務め、若いダンサーたちのフレッシュなチャレンジを今年も見守った。松山バレエ団「ロミオとジュリエット」全幕公演はオーチャードホールでオールスターガラ版を。昨年夏に渋谷グランキューブで上演され出演した清水哲太郎先生演出振付で、熟知しているだけに仲間たちの一挙手一投足を手に汗握りながら応援しながらの鑑賞となった。来年1月に再演されるがまた出演させていただくことが決まっている。佐多達枝先生演出振付「カルミナ・ブラーナ」。これは20年にわたり出演させていただいた作品。壮大なカンカータでさまざまな振付家がこの詩歌のバレエ化に挑んできたがこれだけ長く踊らせていただいただけに国内を代表する振付家佐多達枝先生バージョンが思い出深く、世界で1番だと思い込んでいる。東京だけでなく、名古屋や新潟でも巡演させていただいた。この公演をもって最終公演とされ、最後は残念ながら出演者としてではなく観客となり客席から見守らせていただいた。新国立劇場バレエ団「不思議な国のアリス」、話題のグランドバレエを堪能した。物語が正直バレエにしては複雑で難解なところもあり子どもが本当に楽しめるかは疑問だが、美しい場面の数々で舞台芸術の醍醐味を感じさせてくれた。Kバレエカンパニー「カルメン」。3回目の鑑賞だが完成度が高く、こちらは親友が振付したとあってうれしい。個人の手によって膨大な資金をかけてつくられた功績は大きい。それに引き換え外国産のものを国がバックアップするとは、いくらバレエは国際的なものとなったとはいえ首をかしげるのはわたしだけだろうか。コンテンポラリーダンスの第一人者ともいえる舞踊家・森山開次による「NINJA」も鑑賞。タイトルどおり子ども鑑賞を意識した企画だが、だからといって子ども向けの作風などなく、彼のカリスマ性を充分に感じさせ、作品は台本も主題もないのだが特に後半は芸術性に富んで観客の心を掴んだ。彼も今や円熟期にさしかかっているが、まだまだ新鮮味溢れる活躍をこれからも期待したい。

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