2022年9月(1)
今年の夏は出演、振付作品がある公演は久しぶりになく、巷でいう充電する時間が取れている。また来年新春に出演する松山バレエ団公演に向けて心身体の維持に余念がない。
最近は所属するスポーツクラブのスタジオプログラムでかれこれ1年近く週1回だがヨガを欠かさず受けている。ひとりの女性インストラクターの先生についているが自分の身体トレーニングにとても役立っている気がする。プログラムは難易度が高く、また先生は新体操選手の出身ですばらしい身体能力を備えており、必死にやっても恥ずかしながら半分ぐらいしかこなせていないが、筋力、ストレッチ性、身体性などこれまで意識していなかったボディコントロールを次々と気づかせてくれて日頃の筋力や柔軟性の体力づくりに生かされている。近年はスポーツの世界でも専門分野のジャンルを超えて鍛錬する方法が盛んだと聞き、バレエの技法もよく取り入れられているようだが、その本家バレエもピラティス、ボディコンディション以外にももっと視野を広げていかなければならないのかも知れない。新しいバレエの発掘のためにもおちおちしてられない。たいへんだな。進化が続く世の中は…
バレエダンサーの身体の充電とともに二刀流?である大学教授としても研究を継続すべく芸術鑑賞にも相変わらず時間注いでいたものをいくつか挙げておくと…
・演劇「ひめゆり」新国立劇場演劇研修所
太平洋戦争の沖縄戦で犠牲となったひめゆり学徒隊の悲劇を描いたもので20代の若き演劇研修生が演じていたが、現代の若者が70年前の若者たちを演じる姿に心うたれた。
・オペラ「泥棒かささぎ」大阪フェスティバルホール
ロッシーニのイタリア名作オペラ。権力者と庶民の階級差別を泥棒かささぎを交えて清涼感を与えながら知的に描く。演奏会形式であったがどの歌手も熱演で、かささぎ役は若干22歳の教え子である舞踊学生が務めた。
・オペラ「ペレアスとメリザンド」新国立劇場
ドビュッシー音楽のフランスオペラ。歌と同じ分量ほどの間奏曲的音楽があり、それをすべて情景や演技によって描かれていたがまるでパ・ダクシオンを観ているようで音楽劇に吸い込まれ、あっという間に3時間半という上演時間が過ぎてしまった。
・バレエ「アステラス2022」新国立劇場
世界で活躍する日本人バレエダンサーによるバレエフェスティバル。本公演の実行委員を務めさせていただき、キャスティングや演目選定まで関わらせていただいた。かつて若手ダンサーの祭典「青山バレエフェスティバル」に長く出演させていただいていた思い出が脳裏をよぎり、懐かしく、また新鮮な気持ちで今を生きる国際的ダンサーたちの姿を見守った。
・バレエ「カルメン」Kバレエカンパニー
名作オペラ「カルメル」のバレエ化で熊川哲也の代表的作品。親友のマスターピースで何度も鑑賞してきたが、今回も素晴らしい出来栄えであった。
・バレエ「ロミオとジュリエット」松山バレエ団
清水哲太郎先生演出・振付で初演から40年続く松山バレエ団金字塔的作品。小生も昨年夏に出演させていただいた。いつも温かく迎えて下さり共演させていただいているバレエ団のみなさんの力演を見守った。
・バレエ「ロミオとジュリエット」京都バレエ団
パリ・オペラ座バレエ団のバレエマスター・ファブリース・ブルジョワによる演出・振付でオペラ座バレエ団ダンサーふたりの主演により上演。バレエ団の母体である京都バレエ専門学校では講師を務めさせていただいており、またバレエ団公演でも振付をさせていただいた経緯があり、こちらも家族的な想いで鑑賞させていただいた。
・バレエ「コッペリア」Y.S.バレエカンパニー
山本庸督演出・振付による再演。たびたびこのコラムに登場してきた関西でもっとも親交あるバレエ団の公演で、大学教え子がバレエマスターを務めている。今回は彼自身牧師の役で出演したがとても温かい雰囲気に心奪われた。主演スワニルダも大学教え子女性ダンサーで彼女の活躍ぶりも嬉しかった。
・モダンダンス「メモリアル・パフォーマンス」今岡・加藤モダンダンススペース
昨年ご逝去されたモダンダンス界第一人者・今岡頌子先生の追悼公演
・ミュージカル「PIANIST」博品館劇場
巷で広がっているストリートピアノを舞台に繰り広げられる人間模様を描いたオリジナルミュージカル。主演をつとめた人気俳優中井智彦の歌唱力は圧巻で素晴らしかった。博品館劇場 はかつて小生もミュージカルに出演したり振付した思い出深き劇場。近年東京では愛着あった劇場の閉鎖が相次ぐなか、この劇場はいつまでもあり続けてほしい。
・コンクール「山口国際ダンスコンペティション」渡辺翁記念会館
第2回を迎えたバレエ、コンテンポラリー、バリアフリーといったジャンルで日本、韓国、中国から参加者があった新しいコンクール。
・展覧会「ルートヴィヒ美術館展」国立新美術館
ドイツのルートヴィヒ美術館が所蔵する20世紀から現代までの優れた絵画を紹介した展覧会。絵の鑑賞をはじめたきっかけはアメリカに住んでいた頃に足を運んだニューヨーク現代美術館MOMAで、ピカソはその時からの愛好している画家だが今回も堪能させていただいた。自分にとって敬愛するディアギレフ・ロシアバレエ団と同時代に生きた芸術家には興味が尽きない。
といった舞台を観させていただいた。
ここでニューヨーク留学時代に観た大好きで何度も観たミュージカル映画のタイトルを… 「There’s No Business Like Show Business」
あの名女優マリリン・モンローが出演した名画でテーマ音楽がたまらない。そんな気持ちになるからこそ舞台はすばらしいのです。