2023年8月
暑い季節となった。今は海とは無縁なのだが気持ちとしては行きたい気持ちはむかしと変わらない。なので浜辺に行くとうれしい気持ちになるのはバレエダンサーも同じ。若い頃常夏のマイアミシティバレエ団で踊った時はみんな小麦色の肌だった。なので日焼けしても劇場ではみんなと同じ肌色なので気にせずにカンパニークラスを受けた思い出がある。もちろんダンサーは土地柄プエルトリコ系のダンサーが多かったこともあるが。日本でも浜辺に近いところにバレエスタジオやスクールがあるところは夏はみんな日焼けしているのかな。
大阪芸術大学で夏の公演ともいえるオープンキャンパス上演会では舞踊コースではオペレッタ「金と銀」ともうひとつ白鳥の湖第2幕より「湖畔の場」を取り上げ改訂振付をして上演した。舞踊コース主任に着任して20年あまり経つが白鳥は初めてで舞踊生24名の白鳥ダンサーたちと2ヶ月リハーサルを共にした。やはりこの3年間松山バレエ団と公演活動を共にさせていただき、この作品に馴れ親しんだことも大きい。これまでに国内で多くのバレエ団と共演させていただいたが白鳥の湖は松山バレエ団は群を抜いて作品、振付、舞台美術、ダンサーがすばらしく、そんな栄えある経験させていただいた記憶が鮮明なうちに舞踊コースでも教え子たちに踊ってほしい願いもあった。大阪芸術大学にはオペラハウスがあり、日頃から舞台上でリハーサル出来るのも強味で広い舞台空間で24羽の白鳥が揃い、アームスを広げながら展開する風景もなかなか圧巻で、時間をかけて稽古することが出来た。
またもうひとつの上演作品のオペレッタ「金と銀」も宮殿の大広間の舞踏会シーンを上演するにしても女性イブニングドレス姿、男性タキシード姿が広い舞台空間に似合う。本番ではダンサーたちの日頃の鍛錬の成果を披露した。
京都バレエ専門学校を母体とした京都バレエ団公演が7月中旬に京都会館大ホールであり、トリプルビルのなかで自作の「ロゼット」を上演させていただいた。この作品は2010年に京都バレエ専門学校創立40周年記念として委嘱され振付したもので13年ぶりに再演させていただいた。
ロゼットとは薔薇の姿をモチーフにした胸飾りを意味し、またローザスという薔薇窓に描かれている花々を差し、それらを擬人化させシンフォニックに振付させていただいた。初演でプリンシパルを踊った吉岡ちとせさんがバレエミストレスを務めてくださり作品を復元していただいた。久しぶりにバレエ団を訪れ毎回のリハーサルは出演者全員が瑞々しい姿勢で臨んでくれてこちらも清々しい気持ちになった。本番では出演者が一体となり素晴らしく120%の出来栄えであった。稽古の成果は言わずもがなである。
この日の公演はほかに「卒業記念舞踏会」「アルカード」とフランスが生んだすばらしき名作バレエが上演された。
夏と言えば「夏の夜の夢」。シェイクスピア台本、メンデルスゾーン音楽の名作バレエはあまりにも有名だが、この夏ちいさなこどもたちを森の妖精役に仕立て、リハーサルを開始したのだが夏に愉快なお話やエピソードは洋の東西、古今を問わない。
アメリカにいた頃、ニュージャージー州のミッドアトランティックバレエ団に招かれ、冬に「くるみ割り人形」全幕、夏に「夏の夜の夢」全幕にそれぞれ風物詩に出演した楽しかった思い出が忘れられない。そんな想いを胸に帰国したのだが来年久しぶりに夏の風物詩実現に向けて日々思いめぐらす今日この頃である。