2024年10月

 秋らしい季節とはよく使う言葉だが9月中旬過ぎても今年は使ったことがない。高温が続く日々で四季折々の日本の美しさが失われていくようで芸術にとっても受難な時代になっていくのが寂しい気がする。
全幕バレエの幕開きでジゼルではオペラカーテンが上がると山の麓、樹木に囲まれた風景が照明やスモークで美しく彩りされているシーンから始まるが、その冒頭シーンで観客はみな自然のなかの四季を感じて息を呑む。そんな光景がわれわれにとっていつまでも身近でありたいものである。
 

 今年の夏もバレエコンクールの審査員を務めさせていただいた。日本バレエ協会主催の全日本バレエコンクールと東京シティ・バレエ団主催の全国バレエコンペティションの2大会。夏休みをバレエに打ち込む若いダンサーたちの姿を見るたびに舞踊家としてうれしい気持ちになる。またテクニック、表現とも年々向上して感心するばかり。アドバイスシートというものが出来て久しいが、出場者のレヴェルも高く、逆にこちらが学ぶことが多くてもうアドバイスすることが少なくなり、そろそろこのシートは無くしてもいいのではないかと思うほど。ま、審査員としてこんな弱音を吐いてはならず、これからも見聞を広め精進してまいります。


 毎年夏はバレエフェスティバルが盛んである。新国立劇場が主催するバレエアステラスが今年も8月上旬に2日間開催された。海外で活躍するバレエダンサーたちが夏休みを利用して帰国して出演するフェスティバル。
むかし東京・青山劇場で青山バレエフェスティバルという内外で活躍するバレエダンサーが一同に会して踊りを披露した日本で有名な国際バレエフェスティバルがあり、そのフェスティバルに10年間にわたり連続出演させていただいた。1994年には芸術監督を務めさせていただき、当時の公演出演男性メンバーに熊川哲也(KバレエTOKYO芸術監督)、堀内元(セントルイスバレエ団芸術監督)、久保紘一(NBAバレエ団芸術監督)、森田健太郎(新国立劇場バレエ団バレエマスター)、西島数博(バレエダンサー・俳優)といった第一線で活躍していたダンサーがずらりと顔を揃えていた。この時は当時青山劇場名プロデューサーでおられた故高谷静治さんが企画したすばらしいバレエ公演で堀内充とフットライツダンサーズのメンバーも勢揃いして出演させていただいた思い出深きもので、全日完売の大盛況の舞台でNHKテレビでも放映された。夏に海外バレエダンサーが集うフェスティバルといえば長くバレエ界ではこの公演が代名詞となり、そんなこともあって師であった新国立劇場バレエ団芸術監督(当時)の故牧阿佐美先生が「充ちゃん、また力になってくれるかしら」とこのバレエアステラスの実行委員に任命された経緯があり今も務めさせていただいている。今年も世界中で活躍する日本人バレエダンサーたちが集結して、すばらしい力を発揮して公演を盛り上げてくれた。このフェスティバルで最後を飾るフィナーレが今や名物でわずか数フレーズのカーテンコールながらどの組も爛漫な技を披露し、観客は興奮の坩堝と化すのである。決して大げさに言っているのではなくほんとにすばらしい。委員として来年度の公演企画もすでに始まっておりらまだ拝見していない方は来年ぜひご覧下さい。お越しをお待ち申し上げております。

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