2024年12月

 年の瀬となりいきなり寒さがしみるようになったが2024年バレエ界も活気に満ちていた。松山バレエ団「新白鳥の湖」「ジゼルとアルブレヒト」「くるみ割り人形」K-バレエTOKYO「カルミナ・ブラーナ」「マーメイド」、新国立劇場バレエ団「白鳥の湖」「眠れる森の美女」東京シティバレエ団「白鳥の湖」、スターダンサーズバレエ団「DANCE SPEAKS2024」、バレエシャンブルウエスト「眠れる森の美女」、名倉加代子ジャズダンス「キャントストップダンシング2024」、京都バレエ団「伝承の芸術そして未来へ」、貞松浜田バレエ団「創作バレエリサイタル33」、法村友井バレエ団「アンナ・カレー二ナ」といった国内主要バレエ団や他に恩師や教え子が主催するさまざまな公演の鑑賞を通して舞踊の美学を堪能させていただいた。
昔からバレエ公演に出演するのも観るのも大好きで玉川学園中学部、高等部に在学中からしょちゅう制服姿のまま学校帰りに劇場に通っていた。松山バレエ団、牧阿佐美バレヱ団、東京バレエ団、谷桃子バレエ団、小林紀子バレエシアター、井上博文によるバレエ劇場といったところへまだインターネットなどチケット予約がない時代、電話予約や日比谷プレイガイドあるいは当日券でチケットを購入していた。当時学校の同級生に今でいう映画オタクがいて彼は毎週映画館に通い、映画のうんちくをクラスでみんなによく話をしてそれを聞いて情報を得ていたが、こちらもバレエ情報では負けていなかった。しかしまだバレエなど知られてない時代で聞いてもらう相手は学校にはおらず、もっぱら家でうっぷんばらしのように母親にばかり話していた。父親に話すと主宰するユニークバレエシアターのライバル的存在の話しになってしまい、たまに機嫌を損なうので少年ながら気を使う術を心得ていて黙っていたことが多かった。今となればいい思い出である。
 

 春に今年の秋から始まる大阪芸術大学舞踊公演のラインナップを舞踊学生に発表するのだか、ガストン・ルルー原作「オペラ座の怪人」をそのひとつに決めた。ミュージカルで大ヒットした名作のバレエ化である。ここ数年「ウエストサイドストーリー」「アルルの女」「カルメン」とたて続けに上演し、自身のドラマティックバレエのレパートリーを新たに加えたいと考えニューヨーク留学時代から憧れであった名作に白羽の矢を立てた。まず管弦楽用の音楽を入手し原作を読み直してイメージを膨らませた。ちょうど上演中であったミュージカル公演にも足を運びニューヨークで観た感動を甦らせた。そしてウェーバーの音楽の調べと照らしあわせ改訂台本をつくり舞踊作品用に再構成した。本番初演は12月中旬、稽古開始は7月から開始した。舞台美術も舞台美術コース担当の加藤教授と入念に打ち合わせを重ねて美術学生が総掛かりで1幕5場のデザインと製作を行なった。夏休みをはさみ大学授業でリハーサルを行ったが構想や振付は大学院舞踊研究室に閉じこもって朝晩練り、度々の難局を乗り越えた。また劇中にフラメンコを登用したのだが、若い舞踊学生たちがなかなかイメージが掴めず、関西在住の著名なバイアオーラ市川惠子先生を訪ねて全員でフラメンコショーを鑑賞し終演後手ほどきを受けた。衣裳制作にもこだわりを持ち試行錯誤を重ねながら出演者たち自らがチュチュを休日返上で大学教室で縫った。こうして4ヶ月間さまざまな努力、準備を重ねて大阪芸術大学内にある劇場に入り、舞台照明コース担当の劇団四季所属の紫藤教授とその教え子たちが丸3日間明かりづくりに取り組み、ついに公演を迎えたのである。こうして本番はスタッフ、出演者がひとつとなり成功を収めることが出来た。約3年ぶりの新作を上演し終演後は久しぶりに胸が熱くなり関わった全ての方々を労った。この新作バレエ「オペラ座の怪人〜クリスティーヌとファントム愛の果て」は来年2月16日日曜日に大学芸術劇場で一般公開致します。皆様のお越しをお待ちしています。
 

 本年2024年もバレエ公演に出演、そして振付作品を多く上演することが出来ました。皆さまのお力添えに心より感謝申し上げます。よいお年をお迎え下さい。

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