= 公演後記 =
5月27日、今年も公演無事に終えることが出来た。多くのご来客をいただき心より感謝している。今回はすべて自身の作品を並べ、観に来て下さる方々に楽しんでもらえるようさまざまなラインナップを揃えた。出演する全てのダンサーたちが自分の作品に触れてくれるまたとない機会なので、彼ら彼女たちにはアーティストとして作品と向き合わせるように日々リハーサルに取り組んだ。今の若い世代のダンサーたちは、舞台に向かうとき、まず「バレエを踊りたい」という願望からスタートすることが多く、バレエ・イコール・古典バレエという日本の独特な習慣みたいなものにさらされていることもあり、新作バレエに触れる際も振付家の意向よりも自身が持つバレエの概念をよりどころにして取り組むダンサーが多い。稽古の最中で目の前に振付家がいるのに耳を傾けない現象は、指揮者に立ち向かうオーケストラの演奏家や演出家に身を任せる劇団の役者の姿とはほど遠い。しかし今回のダンサーたちは徐々にこの真の姿を理解してくれ、私の舞踊観にうなずき、公演本番に向けて気持ちがひとつになってくれた。それどころか本番直前に私の父の他界もあり、ほぼ全員がまるで身を捧げるかのような志まで感じ、逆にこちらが「なんて澄んだ気持ちなんだろう」なんて思うまでになってしまった。しかしながらこのような創造的な関係を築いてバレエ団の体をなすことが、日本のバレエ芸術の国際的な向上につながること他ならない。
こうして本番を迎えたが終演後の彼ら彼女たちの晴々とした表情が脳裏に焼きつき、この時のひとりひとりの笑顔を決して忘れてはならないと心の中で誓った。
観に来ていただいた方々は出演者が呼び掛けてかけつけてくれた方々が多く、誠にありがたく深くお礼を申し上げます。
堀内 充