2012年11月
10月に入ると大阪芸大舞踊コースの卒業制作公演や学内公演稽古、玉川大学でバレエを専攻する教え子に振付する新作作品稽古がそれぞれ活発するなか、年末に出演するベートーベン交響曲第九番をバレエ化させた「ルードヴィヒ」のリハーサル、また年末恒例のバレエ「くるみ割り人形」の振付稽古が加わり、あわただしい日々が続く。
ここ数年さまざまなジャンルが交錯して¨DANCE¨というネーミングが曖昧になってきていると感じる。ストリートダンスの力が大きいだろうが、踊る側もかなりハードルが下がり、ダンサーなのかタレントなのか一般人なのか区別がつかない。それらがメディアに氾濫してクリエーターと称して職業として成り立つ動きまで目立つ。実際社会はそれほど甘くないのだか・・・。社会の流れとして仕方のないことかもしれないが、私たちパフォーミングアーツ(オペラやミュージカル・バレエやモダンダンスを主とする舞台芸術の呼称)にそんな勢力を交えてはならない。絵画・音楽・演劇とならぶ舞踊芸術は劇場における舞台上で発揮されるもの、あくまでも額縁のなかで展開されるものだからである。かつて自分の長いニューヨーク留学生活時代に生まれたストリートダンスのルーツを知る者として、そのジャンルのダンスは文字どおり道路や公園、イベント広場あるいはスタジオなどで繰り広げられるべきものであると主張したい。一般人はすべてをダンスとして一緒に括ろう(くくろう)としているが、今こそ専門家は歯止めをかけなければならない。またそのブームに乗ろうとしてわれわれのジャンルもそこへ乗り込むこともあってはならない。私は今後も仲間や後輩、教え子たちとともにパフォーミングアーツの未来を守るためにもまい進する決意である。