2020年8月
7月12日に行われた大阪芸大舞踊コースキャンパス見学会劇場上演会は数ある舞台経験の中でも忘れられない舞台となった。新型ウイルス感染拡大によって、多くの舞台公演が中止に追い込まれ、昨年冬から充実した稽古を積んできた松山バレエ団「新白鳥の湖」公演も3月神奈川県民ホール、5月東京・渋谷オーチャードホールと共に公演中止となってしまい、また7年間続けてきた堀内充バレエコレクション公演も延期となった後、非常事態宣言なる発令でなかなか劇場再開が許されないなか大学側の心温かい英断で大学芸術劇場で上演させて頂いたからだ。しかしながら大学側の感染防止ガイドラインは厳しく、世間でいうソーシァルディスタンス、三密回避、マスク着用といったことが義務づけられ、バレエ「パキータ」も群舞やパートナーリングの変更も余儀なくされた。当初5月に行われる予定だったので振付はすでに昨年末には出来上がっており、5月から出演する2回生たちもオンラインでZoomを使ってのリハーサルから臨んでいた。6月中旬より通常授業が再開されたが、舞踊コース各学年クラスは一斉に舞台に向けたレッスン、公演準備、リハーサルに取り掛かり、なかでもこのパキータ上演は大学にとっても公演再開に向けた皮切りとなり、期待も膨らんだ。そして7月に入り、本番2週間前より舞台稽古が始まり、大学教務・事務局関係者が劇場に立ち入り客席で感染対策がしっかりと取られているか視察したりと物々しいこともあり、また前々日のゲネプロ後に大学事務職員のなかに陽性者が出てしまい、一旦は教授会で舞台公演が行われるキャンパス見学会の中止を検討されたが、結局大学キャンパス内の安全が確認されて何とか予定どおり本番を迎えることが出来た。本番当日はそれらを乗り越え、また自分自身のバレエ公演や出演するはずだった松山バレエ団公演も相次いで中止となり、そんな無念な思いも重なり、舞踊コース生が頑張って踊る姿に胸が熱くなった。舞台本番を迎えるまでにこれほどの苦難を経験したのは初めてで、終演後は出演したダンサーたちに声をかけ「舞台で写真撮ろうぜ!」と呼びかけて終えたばかりの余韻感じる舞台上でみんな涙と笑顔と達成感に満ちた表情のショットとなり、忘れられない一枚となった。興奮のあまりちゃっかり私も出演者の輪の中に入ってしまいました。お許しを…。