堀内 充の時事放談
バレエダンサー・振付家・大学教授として活動を続ける堀内充の公演案内です。
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●2024年1月
何だかんだ言って寒い日々が続く。たまにポカポカ天気になると、もう春だと期待してしまって薄着になろうとするものだが、寒い日に逆戻りすると身体にこたえてしまう。バレエダンサーは暖をとるのが日課なだけに優柔不断な気候に嫌気がさすものだ。
昨年11月中旬に自宅がある東京の道端で転倒してしまい、救急車に運ばれて右肩が激痛で苦しく、検査で脱臼とわかり全身麻酔で肩を元に戻してくれた。ホッとしたのも束の間翌日に大阪に向かい、大学構内で弾みでふたたび脱臼してしまい、またまた救急車に運ばれてもとに戻すという悪夢を二度経験した。その後外科医からは手術と言われ術後バレエ復帰は半年後の今夏以降と告げられた。気が遠くなるようなことで年齢的にももうダンサーとしては無理ではとも言われ、この2月に出演予定であった松山バレエ団に辞退の連絡を入れてこれまでのお世話になったことを伝えさせていただいた。自分としてはこの3年間現役ダンサーとして充実した日を過ごさせいただいただけに、こんな不慮の事故でダンサー生命を終えるとはあまりにも唐突で無念な想いが交錯した。
ところがである。松山バレエ団清水哲太郎先生から連絡をいただき、東京文化会館「くるみ割り人形」公演に招かれ、終演後舞台に来なさいと言われた。当日肩から三角巾をさげながら観にかけつけると客席で清水先生が待って下さり「どうだ?大丈夫か」と気にして下さり、その後バレエ団の素晴らしい舞台を鑑賞後、言われたとおりに奥舞台に伺うとリハーサル室まで通され、すると“がんばれ堀内充”の横断幕が飾ってあり、踊り終えたばかりのバレエ団のみなさんが以前森下洋子先生の舞踊生活を祝った祝賀公演で歌わせていただいたバレエ団の応援歌に私の名前を連呼して「怪我に負けるなフレフレ、ファイト〜」と大合唱してくれたのである。もうただびっくりするばかりで、こんな激励お見舞いがあるのかと感激するばかりであった。もうこれでいつまでも絶望感に浸っているわけにはいかない。翌日からダンサー復帰に向けて立ち上がったのは言うまでもない。ちょうどコロナ禍直前に肩の腱を切ってリハビリに通っていた主治医のところへふたたび訪ねて脱臼の具合を診ていただき、何とか手術なしで治し、ふたたび現役続行出来ないものかと直訴すると主治医は「今からリハビリするしかないだろう。やりましょう」とふたたび専属トレーナーをつけて下さり週2回のトレーニングを開始した。考えられるリハビリありとあらゆることをし、そのうちにまた清水哲太郎先生から見舞いの花束が送られ肩の骨格の模型まで下さり、どこが原因なのか徹底的に解剖学的に研究するよう素晴らしいアドバイスまで頂いた。ちょうど年末、大学が冬休みに入り、勤務が終わり年明けにかけてたっぷり治療に時間をかけることが出来た。トレーナー岩崎先生方の的確なアドバイスもあり、リハビリ、サプリメント、日光浴、食事療法全てを取り入れ、その甲斐があってか年明けてからかなりよくなり、いつしか肩サポーターも外してレッスンが出来るようになり、復帰見込みが6月ぐらいだったのに近くいつの間にかほぼ治り、ふたたび松山バレエ団に顔出し、肩が良くなったことを報告すると清水哲太郎先生、森下洋子先生方以下バレエ団みんなが回復を手放しで喜んでる下さった。そして、何と3月にある松山バレエ団公演にふたたび出演することになったのである。あの激励がなければ諦めていた公演出演、劇的な早春の出来事となった。 -
●2023年12月
今年の冬ほど不安定な気候に悩まされたことはない。温かい日もあれば寒い日もあり冬季とは呼べない季節となった。東京、大阪だけでなく11月に教え子である大学院助手・寺倉礼那からいただいた「華舞道」という奉納舞の振付で初めて足を踏み入れた高野山も晩秋とは思えない暖かさで、また12月初旬に今年も親交が続く舞踊家・川村泉先生がお招きくださった秋田舞踊祭で訪れた秋田も、何だか関東と変わらない冬の気候で期待していた?ドカ雪も降らずじまいであった。四季折々といったシーズンが自慢の日本なのに、またそれが民族の文化を創り上げてきただけに、将来の展開に危惧を抱かずにはいられない今日この頃である。
秋は東京ではたくさんのバレエ公演が上演、各バレエ団の熱演が繰り広げられた。松山バレエ団「シンデレラ」KバレエTOKYO「眠れる森の美女」東京バレエ団「かぐや姫」「眠れる森の美女」新国立劇場バレエ団「ドン・キホーテ」ハンブルクバレエ団「ノイマイヤーの世界」といった全幕バレエを鑑賞させていただいた。近年国内バレエ界は華やかさを帯びて、海外バレエ団公演と全くひけを取らない展開を見せてくれる。それなのにいまだに「バレエをもっと知ってもらいたい」などと言って吹聴している若者も見かけるがそんな言動に理解に苦しむ。そんなことを言っている者たちこそ劇場にもっと足を運んでその目でしっかりとそれらの美しき光景を目に焼き付けてもらいたい。
2023年も多くのバレエ作品を上演させていただきました。
「ラプソディ・イン・ブルー」
「ウエスタンシンフォニー」
「アルルの女」
「ザ・フォーシーズンス」
「ロマンシング・フィールド」
「Leaves」
「リトルフーガ」
「ロマンスとアレグロ」
「Paraphrase」
「シンフォニック・ダンス(ウエストサイドストーリー)」
「ラフマニノフ・ピアノコンチェルトNo.3」
「金と銀」
「白鳥の湖より湖畔の場」
「ロゼット」
「ファンファーレ」
「アヴェ・マリア」
「Horizon」
「グラズノフ・スイート」
「カルメン」大中小合わせて計19作品となりました。堀内充バレエコレクションファイナル、京都バレエ団公演、大阪芸術大学舞踊コース卒業舞踊公演および学内公演、玉川大学芸術学部舞踊公演、高野山「華舞道」、秋田舞踊祭「會ら・Dance focus」などで100名を超えるアーティスト、ダンサーたちが彩ってくれました。毎年ながら1年でこれだけの作品を発表できることに感謝申し上げます。
本年もありがとうございました。
皆さま新年2024年もよいお年を迎え下さい。 -
●2023年8月
暑い季節となった。今は海とは無縁なのだが気持ちとしては行きたい気持ちはむかしと変わらない。なので浜辺に行くとうれしい気持ちになるのはバレエダンサーも同じ。若い頃常夏のマイアミシティバレエ団で踊った時はみんな小麦色の肌だった。なので日焼けしても劇場ではみんなと同じ肌色なので気にせずにカンパニークラスを受けた思い出がある。もちろんダンサーは土地柄プエルトリコ系のダンサーが多かったこともあるが。日本でも浜辺に近いところにバレエスタジオやスクールがあるところは夏はみんな日焼けしているのかな。
大阪芸術大学で夏の公演ともいえるオープンキャンパス上演会では舞踊コースではオペレッタ「金と銀」ともうひとつ白鳥の湖第2幕より「湖畔の場」を取り上げ改訂振付をして上演した。舞踊コース主任に着任して20年あまり経つが白鳥は初めてで舞踊生24名の白鳥ダンサーたちと2ヶ月リハーサルを共にした。やはりこの3年間松山バレエ団と公演活動を共にさせていただき、この作品に馴れ親しんだことも大きい。これまでに国内で多くのバレエ団と共演させていただいたが白鳥の湖は松山バレエ団は群を抜いて作品、振付、舞台美術、ダンサーがすばらしく、そんな栄えある経験させていただいた記憶が鮮明なうちに舞踊コースでも教え子たちに踊ってほしい願いもあった。大阪芸術大学にはオペラハウスがあり、日頃から舞台上でリハーサル出来るのも強味で広い舞台空間で24羽の白鳥が揃い、アームスを広げながら展開する風景もなかなか圧巻で、時間をかけて稽古することが出来た。
またもうひとつの上演作品のオペレッタ「金と銀」も宮殿の大広間の舞踏会シーンを上演するにしても女性イブニングドレス姿、男性タキシード姿が広い舞台空間に似合う。本番ではダンサーたちの日頃の鍛錬の成果を披露した。京都バレエ専門学校を母体とした京都バレエ団公演が7月中旬に京都会館大ホールであり、トリプルビルのなかで自作の「ロゼット」を上演させていただいた。この作品は2010年に京都バレエ専門学校創立40周年記念として委嘱され振付したもので13年ぶりに再演させていただいた。
ロゼットとは薔薇の姿をモチーフにした胸飾りを意味し、またローザスという薔薇窓に描かれている花々を差し、それらを擬人化させシンフォニックに振付させていただいた。初演でプリンシパルを踊った吉岡ちとせさんがバレエミストレスを務めてくださり作品を復元していただいた。久しぶりにバレエ団を訪れ毎回のリハーサルは出演者全員が瑞々しい姿勢で臨んでくれてこちらも清々しい気持ちになった。本番では出演者が一体となり素晴らしく120%の出来栄えであった。稽古の成果は言わずもがなである。
この日の公演はほかに「卒業記念舞踏会」「アルカード」とフランスが生んだすばらしき名作バレエが上演された。夏と言えば「夏の夜の夢」。シェイクスピア台本、メンデルスゾーン音楽の名作バレエはあまりにも有名だが、この夏ちいさなこどもたちを森の妖精役に仕立て、リハーサルを開始したのだが夏に愉快なお話やエピソードは洋の東西、古今を問わない。
アメリカにいた頃、ニュージャージー州のミッドアトランティックバレエ団に招かれ、冬に「くるみ割り人形」全幕、夏に「夏の夜の夢」全幕にそれぞれ風物詩に出演した楽しかった思い出が忘れられない。そんな想いを胸に帰国したのだが来年久しぶりに夏の風物詩実現に向けて日々思いめぐらす今日この頃である。 -
●2023年7月
5月公演ではさまざまな方々からの励ましやご声援、お力添えをいただいた。本番にかけつけていただいたことはもっともうれしいことだが、やはり大きなバレエ団公演とは違い、1日しか公演本番がないこともあり、かけつけられない方々も多くそれは百も承知している。観に行けないけれどエールを送ってくださることも多く、そんな方々への感謝も忘れない。
親友と呼べる数少ないひとりである熊川哲也Kバレエカンパニー・ディレクターからも公演間際に連絡をもらい、公演直前の数日前東京・西麻布で食事を共にした。毎年彼のカンパニー公演シーズンと重なってしまうことが多いのだが、多忙にも関わらずいつも観にかけつけてくれる。世界でもっとも多忙なクラシックバレエにおけるプロフェッショナルなのにかけつける。やはり一流は行動も素晴らしい。若かった頃、毎年夏にあった青山劇場バレエフェスティバルや札幌で行われたドリーム・オブ・ヤングダンサーズ公演に共に出演し、リハーサルでも本番直前でも食事している時でもいつもバレエ談義で熱く語り合っていた仲で、ロイヤルバレエ団を経て世界的なスターダムにのしあがっても途切れることなく、もう30年ぐらいずっと親交を続けさせてもらっている。今は若い頃と違い、彼は経営者としてビジネス界、また社交界でも幅広く活躍しているのに会う時は昔と変わらぬスタンスで話を合わせてくれる。この時の食事でも東京都知事に表敬訪問した時の話やローザンヌ国際バレエコンクールで審査員をした様子を話したと思ったら、「去年の充ちゃんの踊りさ、」とか「昔充ちゃんの部屋に泊まったようなぁ」と話がポンポンと多岐に渡って尽きない。こちらも彼のカンパニー創設以来20年にわたりほとんどの公演を観させてもらっているのでリアルタイムの話題も合い、最近久しぶりに彼自身が出演を果たしたクレオパトラも東京、大阪公演のどちらも観たのだが「全公演完売だったのにそんなことする友人はあんただけだ」と笑い飛ばしてくれたりもする。食事中では今回観にいけなくて申し訳ないと言い続けてくれたが、彼の会心作であるバレエ界話題の「蝶々夫人」再演を間近に控えた時のことである。彼の寛容さには感謝しかなく、人格の素晴らしさは益々進化するばかりである。今秋よりカンパニーはKバレエTOKYOとなり活動を新たにするが益々の発展を一バレエ人としても応援を続けたい。 -
●2023年6月
5月19日堀内充バレエコレクションが無事に終演しました。出演者が一丸となって公演に向かい、また昔の劇団のように丁寧に公演告知しチケットを手売りして1階席が完売となり、私のバレエ界の恩師や先輩の先生、同志、教え子たちが多数かけつけて下さり、FAINALと銘打った舞台を多勢の方に見守られ感謝の念にたえません。今では大手の舞台公演では見られるようになったスタンディングオーベーションをいただき、盛大なカーテンコールとなりました。2019年公演までは振付に専念しながら、ここ数年仲間と共にふたたびダンサーとして踊る作品が増えたのは言うまでもなく本コラムで取り上げたとおり3年前から松山バレエ団全幕公演にジーグフリード役に出演、現役ダンサーとして再始動したからで、こうして4年間仲間たちと踊れたことは師である清水哲太郎先生のおかげです。今回ファイナル公演で清水哲太郎先生、森下洋子先生、そして松山バレエ団員がかけつけて下さり、見守られたことも喜びのひとつでした。
父のもとユニークバレエシアターで活動しながら1991年より堀内充とフットライツダンサーズ、2003年より堀内充バレエプロジェクト公演、そして2013年より堀内充バレエコレクション公演と展開してまいりました。また次のライフステージで劇場の観客の皆さまとお会いすることを楽しみにしています。なおもうひとつのライフワークである2001年度より務めている大阪芸術大学卒業舞踊公演・芸術監督は続けており、これからも舞踊学生と共に舞踊活動を展開し、今年度は今のところ堀内充版「カルメン」「白鳥の湖より湖畔の場」その他数作品を予定しており、こちらにもお越しくださること楽しみにしております。
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●2023年4月
ようやくコロナ禍が明けようとしている。まさか収束されるまでに3年も要するとは当時は思わなかった。思い起こせば3年前松山バレエ団の新白鳥の湖公演に向けてほぼ毎日バレエ団のレッスンとリハーサルに明け暮れていた日々が公演中止となり、街も鎮まりかえり、大学も新学期が延期され、ただ時だけが過ぎていったあの日、もう人生のなかで繰り返して欲しくない出来事である。しかし自分にとってバレエを手放すことなくずっと今日まで続けてこれたのは幸せで関わるすべての人たちに感謝の念は忘れてはならないことを肝に命じて過ごす今日この頃である。
1月終わりに玉川大学芸術学部パフォーミングアーツ学科堀内バレエゼミの最終授業発表に続き、2月下旬には大阪芸術大学卒業舞踊公演を今年も無事に終えることが出来た。「ラプソディ・イン・ブルー」「アルルの女」「ウエスタン・シンフォニー」「フォーシーズンス」といった自作バレエ作品をラインナップに2日間にわたり大阪芸術大学芸術劇場で上演した。
ふたつの大学で今年卒業となった22名の女子学生バレエダンサーの姿が脳裏から離れられないでいる。3月に卒業式を終え今頃どうしているのだろうかと思い巡らしてしまう。残念ながら社会、舞踊、バレエの世界は無情なところがほとんど。私と舞踊大学で過ごしたバレエ漬けの4年間を胸に頑張ってほしいと切に願っている。いよいよ11年間続けた堀内充バレエコレクション公演も5月にファイナルを迎えようとしている。まわりは今年で区切りとなることに驚きを隠せない方々が多く、心苦しくもありまたそんな想いを寄せてくださることに感謝の気持ちも抱き複雑な心境が続く。3月から本格的にリハーサルを始動させて大学新年度開始をはさみまもなく2ヶ月が過ぎようとしている。今回ラスト公演に自らが出演したいと申し出てくれた若者たちに特別な想いを持つ。自分から「出たい!」と意志を表すことはなかなか出来ないことだが恥ずかしいことではなく、むしろ称賛されるものである。小生もこんな今でもやりたいことを自ら打ち明ける素晴らしさを実感している。そんな想いから今回は出演者29名全員に男女お揃いプロダクションレオタード&タイツをYUMIKOの協力を得てプレゼントさせてもらった。「心をひとつに」なんて今どき恥ずかしいなんて思わず、「心身ひとつ!」となり公演最後まで全員がトップランナーとして走り抜ける覚悟で臨む所存です。
愛するシェイクスピア「真夏の夜の夢」のラストシーンで妖精グッドフェローの一句を……
『今宵はこれにておやすみなさいまし。ご贔屓のおしるしにお手を拝借。いずれパックが舞台でお礼をいたします』
・・・妖精パックことグッドフェローはアメリカ、日本のバレエ団で演じた私の当たり役であったことは言うまでもありません。
皆さまのお越しを心からお待ち申し上げます。
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●2023年1月
松山バレエ団創立75周年新春公演「ロミオとジュリエット」オールスタークライマックスフェスティバル・神奈川県民ホールが終演した。この日の本番のために昨年9月頃からバレエ団でレッスン、リハーサルを行い、10月と11月と回数を重ね、12月下旬からはほぼ毎日通い稽古に明け暮れた。松山バレエ団のロミオとジュリエットに出演したのは今回で2回目で、1年半前に渋谷LINE CUBE SHIBUYAで上演されて出演して以来で今回もロミオ役のひとりとして出演させていただいた。
20年前にもロミオとジュリエット全幕に出演したことがあり、その時のジュリエット役は長くモスクワ・ロシアバレエ団で日本人プリンシパルダンサーとして活躍された千野真沙美さんで、現在は息子さん千野円句君がボリショイバレエ団のスターダンサーと聞く。振付は師である横井茂先生だった。その時忘れられないことは横井先生が「充、私のロミジュリの初演は森下洋子ちゃんと清水哲太郎君が踊ってくれたんだよ」と話してくれた言葉。今こうして清水哲太郎先生の薫陶を受け、森下洋子先生の相手役を務めさせていただいたことが何という縁なのだろうかと思わずにいられなかった。今頃天国にいる先生も微笑んでいるかもしれない。
松山バレエ団の稽古は朝から夜までハードであったが、この素晴らしき瞬間を迎えるときめきもあって今回も心身充実したものであった。松山バレエ団の出演はこの3年間コロナ禍ながら5回目となったが清水先生はいつも温かくも厳しい稽古をつけて下さり、身体論から精神論に至るまでこの私に躾けて下さった。バレエ団のスタッフ、出演者仲間の方々もバックアップを惜しまずだからこそこの大役を踊れ、感謝の念にたえない。こうして新春にかけがえのない思い出をいただいた。ひとつ、舞台は厳しく辛いものだがやはりそれを乗り越えたあとのカーテンコールやレベランスは嬉しい。今回のカーテンコールの踊りでは尊敬する森下洋子先生をはじめ、先輩の鄭先生、同期のプリンシパルダンサーの山川晶子さん佐藤明美さんから後輩の男女若手ダンサーのなかにまじって円をつくりながら一緒にオッフェンバックの音楽を踊った瞬間は実に楽しかった。7名のジュリエットと5名のロミオがそれぞれ同じ衣裳をまといそれがまた愉快だったのだが、公演を見馴れた観客からは「やや?ひとり見慣れぬダンサーがいるぞ」ときっと思われていたのだろうなぁ。 -
●2022年12月
自分にとって秋から冬にかけては毎年大学のバレエ公演ラッシュだが、巷でも秋は舞台芸術が盛んだ。5年前までは秋になるとクリスマスに必ず堀内版くるみ割り人形を栃木県宇都宮にある素敵な公立の栃木総合文化センター大ホールで橋本陽子先生率いるエコールドゥバレエで上演していたので週末はその稽古でほぼ毎週宇都宮にいたが、その公演シリーズも終わり、その分今は舞台鑑賞する時間に充てている。といってもひと昔前まで日本芸術文化振興基金や文化庁芸術祭の委員を務めていた時も仕事上実に多くの公演を鑑賞していたが、今は自分が興味ある、あるいはこれまでの舞台芸術で築いてきた人脈で繋がりのある方々の舞台を選んで足を運んでいるのでこちらの方がどちらかといえばウキウキする。
演奏会では大阪フィルハーモニー交響楽団、ボストン交響楽団、親交ある井上道義先生指揮によるNHK交響楽団7「ショスタコーヴィチ交響曲第10番」演劇公演はフランス演劇「ガラスの動物園」、オペラでは新国立劇場「ジュリアス・チュザーレ」、ミュージカルでは長塚圭史演出・前田敦子出演「夜の女たち」、大人気ミュージカル「ハリーポッター」、父の弟子でもあった美谷和枝先生シャンソンショー、そしてバレエでは松山バレエ団「くるみ割り人形全幕」、Kバレエカンパニー「クレオパトラ全幕」、ジャズダンスでは敬愛する名倉加代子先生「キャントストップダンシング」公演、東京シティバレエ団、ボナンザグラムダンス公演など多くの公演、演奏会へ観に足を運んだ。
チケット代は高額なものが多いものだかなかでもボストン響は2万7千円だった。なかなか一般客や自分の教え子たちである大学生ではとても手に届かない。学生チケットというのもあるがそんなに数は多くない。舞台芸術は制作費がかかるから国からの援助も必要なのだが何よりも出演者もそれだけのチケットを支払うだけの演奏や芸や演技、技術、踊りを示すことが専門家の務めである。舞踊分野でも松山バレエ団、Kバレエカンパニーは東京、大阪どちらも鑑賞したが完売ですばらしい限りである。清水哲太郎先生、森下洋子先生、そして熊川哲也君はバレエ界の金字塔。同じ時代に生きていることに感慨すら感じる。今年も残りわずか。今年も振付家としてはたくさんの振付作品を上演させてもらった。
「パリジェンヌたちの喜び」
「チャイコフスキー組曲」
「シンフォニックダンス ウエストサイドストーリー」
「金と銀」
「胡蝶」
「EPISODE/エピソード」
「バヤデールより宮殿の場」
「ウエスタンシンフォニー」
「ラプソディ・イン・ブルー」
「アルルの女」
「ダンセ・ボヘミアン〜カルメンより」
「ザ・フォーシーズンス」
「Flowers/花の精たちの踊り」
13作品と他に小品も上演させていただいた。堀内充バレエコレクション、大阪芸術大学舞踊コース卒業舞踊公演、玉川大学芸術学部舞踊公演などで100名を超えるダンサーたちが踊ってくれました。1年でこれだけの自作品を発表できることに感謝します。来年はバレエダンサーとして松山バレエ団新春公演「ロミオとジュリエット・クライマックスフェスティバル」から始まります。2年前松山バレエ団「新白鳥の湖」全幕に主演させていただき、尊敬する清水哲太郎先生の薫陶を受けバレエダンサーとして本格的に現役復帰を果たし、今は毎日2時間の身体トレーニング、松山バレエ団と朝から暮れるまで団員たちとレッスン、リハーサルに余念がありません。自分が鑑賞するようにチケット代金を払い観に来て下さる観客の皆様に恥じぬようプロダンサーとして踊りを全う致します。
皆さま、良い年をお迎え下さい。
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●2022年9月(2)
芝公園にある郵便貯金会館メルパルクホールが隣接するホテルと共に閉館された。この劇場はジャパンバレエにおける都内でもっとも多く公演が行われていた舞台で、バレエ界のたくさんの関係者やファンから惜しまれた。もちろん自分のバレエ人生の中でも多くこの劇場に携わってきただけに寂しい気持ちに溢れた。
今から40年以上前小学生の頃に牧阿佐美バレヱ団「くるみ割り人形」全幕でフリッツ役を務めたのがそこでの初舞台。その時の演出・振付がイギリス人ジャック・カーター氏で昭和の時代、それも小学生にして外国人振付家と出会う今思うと何と素晴らしい機会を師・牧阿佐美先生よりいただいたのかと感じる。そんな華々しいデビュー以来中学生になり「飛鳥物語」や橘バレエ学校公演、高校生になってから谷桃子バレエ研究所「シンデレラ」全幕王子役、アメリカ留学帰国後は工藤大弐バレエ公演、毎年秋にあった東京バレエグループ公演、東京シティバレエ団、日本バレエ協会公演、現代舞踊協会公演などに出演と枚挙にいとまがない。そしてもっとも思い出深いのがユニークバレエシアター1992年9月3日に上演した公演。その公演では父がふたつの近代バレエを手掛け、小生がジャズ音楽に振付した「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の3本立てで3作品とも出演した。当初兄が「カルナヴァル」にアルルカン役に主演する予定だったが前日のゲネで足を怪我し降板してしまい、代役として踊り大車輪の活躍となり、後日新聞夕刊をはじめ、多くの舞踊新聞、雑誌に取り上げていただき、この舞台は自分が舞踊界から去るときに「思い出の舞台は」と聞かれたら(有名スポーツ選手じゃあるまいし、まずないが…)おそらく公演をベスト3に入れるだろう。
その後この劇場では現役ダンサーとしてだけでなく、振付作品を上演したり、コンクール審査員を務めたり、もちろん多くの素晴らしい公演を鑑賞させていただき、東京都港区ということで成人式もここで迎えた思い出がある。
この郵便貯金会館の施設が8月31日をもって閉館となり自分の誕生日が8月29日でもあり、閉館の前日に劇場に隣接するホテルに泊まりプライベートでお別れ会をしました。こんな盛大な惜別の仕方をするバレエダンサーはおそらく世界で私だけだろう。
・・・メルパルクホールよ、本当にありがとうございました。
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●2022年9月(1)
今年の夏は出演、振付作品がある公演は久しぶりになく、巷でいう充電する時間が取れている。また来年新春に出演する松山バレエ団公演に向けて心身体の維持に余念がない。
最近は所属するスポーツクラブのスタジオプログラムでかれこれ1年近く週1回だがヨガを欠かさず受けている。ひとりの女性インストラクターの先生についているが自分の身体トレーニングにとても役立っている気がする。プログラムは難易度が高く、また先生は新体操選手の出身ですばらしい身体能力を備えており、必死にやっても恥ずかしながら半分ぐらいしかこなせていないが、筋力、ストレッチ性、身体性などこれまで意識していなかったボディコントロールを次々と気づかせてくれて日頃の筋力や柔軟性の体力づくりに生かされている。近年はスポーツの世界でも専門分野のジャンルを超えて鍛錬する方法が盛んだと聞き、バレエの技法もよく取り入れられているようだが、その本家バレエもピラティス、ボディコンディション以外にももっと視野を広げていかなければならないのかも知れない。新しいバレエの発掘のためにもおちおちしてられない。たいへんだな。進化が続く世の中は…バレエダンサーの身体の充電とともに二刀流?である大学教授としても研究を継続すべく芸術鑑賞にも相変わらず時間注いでいたものをいくつか挙げておくと…
・演劇「ひめゆり」新国立劇場演劇研修所
太平洋戦争の沖縄戦で犠牲となったひめゆり学徒隊の悲劇を描いたもので20代の若き演劇研修生が演じていたが、現代の若者が70年前の若者たちを演じる姿に心うたれた。・オペラ「泥棒かささぎ」大阪フェスティバルホール
ロッシーニのイタリア名作オペラ。権力者と庶民の階級差別を泥棒かささぎを交えて清涼感を与えながら知的に描く。演奏会形式であったがどの歌手も熱演で、かささぎ役は若干22歳の教え子である舞踊学生が務めた。・オペラ「ペレアスとメリザンド」新国立劇場
ドビュッシー音楽のフランスオペラ。歌と同じ分量ほどの間奏曲的音楽があり、それをすべて情景や演技によって描かれていたがまるでパ・ダクシオンを観ているようで音楽劇に吸い込まれ、あっという間に3時間半という上演時間が過ぎてしまった。・バレエ「アステラス2022」新国立劇場
世界で活躍する日本人バレエダンサーによるバレエフェスティバル。本公演の実行委員を務めさせていただき、キャスティングや演目選定まで関わらせていただいた。かつて若手ダンサーの祭典「青山バレエフェスティバル」に長く出演させていただいていた思い出が脳裏をよぎり、懐かしく、また新鮮な気持ちで今を生きる国際的ダンサーたちの姿を見守った。・バレエ「カルメン」Kバレエカンパニー
名作オペラ「カルメル」のバレエ化で熊川哲也の代表的作品。親友のマスターピースで何度も鑑賞してきたが、今回も素晴らしい出来栄えであった。・バレエ「ロミオとジュリエット」松山バレエ団
清水哲太郎先生演出・振付で初演から40年続く松山バレエ団金字塔的作品。小生も昨年夏に出演させていただいた。いつも温かく迎えて下さり共演させていただいているバレエ団のみなさんの力演を見守った。・バレエ「ロミオとジュリエット」京都バレエ団
パリ・オペラ座バレエ団のバレエマスター・ファブリース・ブルジョワによる演出・振付でオペラ座バレエ団ダンサーふたりの主演により上演。バレエ団の母体である京都バレエ専門学校では講師を務めさせていただいており、またバレエ団公演でも振付をさせていただいた経緯があり、こちらも家族的な想いで鑑賞させていただいた。・バレエ「コッペリア」Y.S.バレエカンパニー
山本庸督演出・振付による再演。たびたびこのコラムに登場してきた関西でもっとも親交あるバレエ団の公演で、大学教え子がバレエマスターを務めている。今回は彼自身牧師の役で出演したがとても温かい雰囲気に心奪われた。主演スワニルダも大学教え子女性ダンサーで彼女の活躍ぶりも嬉しかった。
・モダンダンス「メモリアル・パフォーマンス」今岡・加藤モダンダンススペース
昨年ご逝去されたモダンダンス界第一人者・今岡頌子先生の追悼公演・ミュージカル「PIANIST」博品館劇場
巷で広がっているストリートピアノを舞台に繰り広げられる人間模様を描いたオリジナルミュージカル。主演をつとめた人気俳優中井智彦の歌唱力は圧巻で素晴らしかった。博品館劇場 はかつて小生もミュージカルに出演したり振付した思い出深き劇場。近年東京では愛着あった劇場の閉鎖が相次ぐなか、この劇場はいつまでもあり続けてほしい。・コンクール「山口国際ダンスコンペティション」渡辺翁記念会館
第2回を迎えたバレエ、コンテンポラリー、バリアフリーといったジャンルで日本、韓国、中国から参加者があった新しいコンクール。・展覧会「ルートヴィヒ美術館展」国立新美術館
ドイツのルートヴィヒ美術館が所蔵する20世紀から現代までの優れた絵画を紹介した展覧会。絵の鑑賞をはじめたきっかけはアメリカに住んでいた頃に足を運んだニューヨーク現代美術館MOMAで、ピカソはその時からの愛好している画家だが今回も堪能させていただいた。自分にとって敬愛するディアギレフ・ロシアバレエ団と同時代に生きた芸術家には興味が尽きない。といった舞台を観させていただいた。
ここでニューヨーク留学時代に観た大好きで何度も観たミュージカル映画のタイトルを… 「There’s No Business Like Show Business」
あの名女優マリリン・モンローが出演した名画でテーマ音楽がたまらない。そんな気持ちになるからこそ舞台はすばらしいのです。


